#31 お手軽な古印体風?フォント「康印体」 2020/07/10
ダイナコムウェアが制作し、販売している「康印体」(こういんたい)というフォント。『ダイナフォント総合カタログ』によると、リリース時期は1996年頃のようだ。ダイナコムウェアが安価なTrueTypeフォントのパッケージ販売を始めて間もない頃…かな。現在ではTrueTypeフォントの他に、プロユース向きのOpenTypeフォントも制作・提供されている。今回は、そんな古印体(風?)フォント「康印体」について取り上げたい。
まず康印体とは、こんなフォント↓数ある古印体の中では落ち着いていて、かな文字にも漢字にも癖が少なく、比較的読みやすい印象だ。古印体のセレクトって他のジャンルのフォントと比べても難しく、平体がかかっていたり、全体的に文字が小ぶりにデザインされていたりと、満足できるものがなかなか見つからない。その点「康印体」は、恐怖、怒り、不気味、緊張、レトロといった現代の古印体に求められるものを手軽に表現できるデザインでありながら、フォントとしての使いやすさも兼ね備えていて、バランスが取れているように思うのだ。特に漫画や同人誌のように無彩色しか使えず、高度な文字組や装飾ができない環境では、重宝するフォントだと思う。横に組んでも縦に組んでもきれいに見えるし、文字と文字の間隔をツメたりするような細かい手間をかけなくても無理なく読めるからね。
ただこのフォント、下記の画像を見比べるとすぐにわかるように、骨格は「平成丸ゴシック体」のようだ。「どう見ても平成丸ゴシック体じゃん!」「言われなくても気付いていたよ!」という方もいるかもしれない(笑)。漢字には手が加えられているようだが、ひらがな・カタカナは平成丸ゴシック体そのもので、そこにカスレ等の加工を施して古印体っぽく仕上げただけ、なのだと思う。カスレの加工も他の古印体と比べて控えめなので、それなりに大きいサイズで使わないと、完成時に古印体特有のカスレを活かせない残念な仕上がりになってしまう懸念もあるね…。ベースになった平成丸ゴシック体(W4:本文向き)よりも少し細身に見えるくらいだし、もう少し太めのウェイトがあっても良かったかもしれない。
また、ダイナコムウェア公式サイトの「康印体」紹介ページには、「デザイナーが旅行先で旧跡に残された巨大な石碑を目の前にしたことがきっかけで生まれた書体です」と書かれている。しかし、そこまでのインスピレーションを受けて制作したフォントには見えないし、単なる後付けのコンセプトのように思える。堅実にイチからフォントをデザインしているデザイナーや、古印体にこだわりのある人の中には、あまり「康印体」のようなフォントを好まない人もいるかもしれない。だから僕は冒頭で康印体について、あえて「古印体(風?)フォント」という書き方をしたのだ。
とはいえ、康印体がリリースされた1996年頃は、PCで使える古印体の選択肢…どころか、デジタルフォントの選択肢自体が、今よりもずっと少なかったはずだ。僕が調べた限りだが、ダイナフォントの比にならないほど、とんでもなく質の悪いフォントが商品として市場に出回っていたりした、なんて話もあったようだ…。
そう考えると「康印体」は、平成丸ゴシック体ベースの派生フォントではあるものの、古印体としても、あるいは広い意味での「フォント」としても、使いやすく作られていると僕は思う。安価なTrueTypeフォントのパッケージに収録されていたので、一般ユーザーでも手に入れやすかっただろうからね。2020年の今では、90年代後半の当時よりもさまざまな古印体がユーザーの好みで選べる時代になったけど、今でも漫画雑誌などでは、他でもない「康印体」をあえて採用している例も見られる。それはやはり、コストパフォーマンスや使いやすさなど、一定以上の評価がされているからだと思う。
今回紹介した「康印体」以外のダイナフォントにも、手間や開発コストを抑えるためか、平成書体フォントや他の既存のダイナフォントをベースにしたと思われる派生フォントが多く存在する。いろいろ見方とか賛否はあるかもしれないが、手間とコストを抑えつつ、使い手が欲するフォントの需要と使いやすさを両立したフォントを作り続けてくれる点で、僕はやっぱりダイナフォントが好きだ。
それでは、また来月の「フォントの独り言」でお会いしましょう。ィヨロシク!!
【参考にしたサイトやカタログなど】・『ダイナフォント総合カタログ 2020年版』ダイナコムウェア株式会社↓同カタログのPDF版が見られます。https://www.dynacw.co.jp/support/support_download_list.aspx?sid=39・DFP康印体W4 TrueType for Win|DynaFont↓任意の文字列を打ち込んで試し打ちができます。https://www.dynacw.co.jp/product/product_download_detail.aspx?sid=3349
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ダイナコムウェアが制作し、販売している「康印体」(こういんたい)というフォント。
『ダイナフォント総合カタログ』によると、リリース時期は1996年頃のようだ。
ダイナコムウェアが安価なTrueTypeフォントのパッケージ販売を始めて間もない頃…かな。
現在ではTrueTypeフォントの他に、プロユース向きのOpenTypeフォントも制作・提供されている。
今回は、そんな古印体(風?)フォント「康印体」について取り上げたい。
まず康印体とは、こんなフォント↓
数ある古印体の中では落ち着いていて、かな文字にも漢字にも癖が少なく、比較的読みやすい印象だ。
古印体のセレクトって他のジャンルのフォントと比べても難しく、平体がかかっていたり、全体的に文字が小ぶりにデザインされていたりと、満足できるものがなかなか見つからない。
その点「康印体」は、恐怖、怒り、不気味、緊張、レトロといった現代の古印体に求められるものを手軽に表現できるデザインでありながら、フォントとしての使いやすさも兼ね備えていて、バランスが取れているように思うのだ。
特に漫画や同人誌のように無彩色しか使えず、高度な文字組や装飾ができない環境では、重宝するフォントだと思う。
横に組んでも縦に組んでもきれいに見えるし、文字と文字の間隔をツメたりするような細かい手間をかけなくても無理なく読めるからね。
ただこのフォント、下記の画像を見比べるとすぐにわかるように、骨格は「平成丸ゴシック体」のようだ。
「どう見ても平成丸ゴシック体じゃん!」「言われなくても気付いていたよ!」という方もいるかもしれない(笑)。
漢字には手が加えられているようだが、ひらがな・カタカナは平成丸ゴシック体そのもので、そこにカスレ等の加工を施して古印体っぽく仕上げただけ、なのだと思う。
カスレの加工も他の古印体と比べて控えめなので、それなりに大きいサイズで使わないと、完成時に古印体特有のカスレを活かせない残念な仕上がりになってしまう懸念もあるね…。
ベースになった平成丸ゴシック体(W4:本文向き)よりも少し細身に見えるくらいだし、もう少し太めのウェイトがあっても良かったかもしれない。
また、ダイナコムウェア公式サイトの「康印体」紹介ページには、「デザイナーが旅行先で旧跡に残された巨大な石碑を目の前にしたことがきっかけで生まれた書体です」と書かれている。
しかし、そこまでのインスピレーションを受けて制作したフォントには見えないし、単なる後付けのコンセプトのように思える。
堅実にイチからフォントをデザインしているデザイナーや、古印体にこだわりのある人の中には、あまり「康印体」のようなフォントを好まない人もいるかもしれない。
だから僕は冒頭で康印体について、あえて「古印体(風?)フォント」という書き方をしたのだ。
とはいえ、康印体がリリースされた1996年頃は、PCで使える古印体の選択肢…どころか、デジタルフォントの選択肢自体が、今よりもずっと少なかったはずだ。
僕が調べた限りだが、ダイナフォントの比にならないほど、とんでもなく質の悪いフォントが商品として市場に出回っていたりした、なんて話もあったようだ…。
そう考えると「康印体」は、平成丸ゴシック体ベースの派生フォントではあるものの、古印体としても、あるいは広い意味での「フォント」としても、使いやすく作られていると僕は思う。
安価なTrueTypeフォントのパッケージに収録されていたので、一般ユーザーでも手に入れやすかっただろうからね。
2020年の今では、90年代後半の当時よりもさまざまな古印体がユーザーの好みで選べる時代になったけど、今でも漫画雑誌などでは、他でもない「康印体」をあえて採用している例も見られる。
それはやはり、コストパフォーマンスや使いやすさなど、一定以上の評価がされているからだと思う。
今回紹介した「康印体」以外のダイナフォントにも、手間や開発コストを抑えるためか、平成書体フォントや他の既存のダイナフォントをベースにしたと思われる派生フォントが多く存在する。
いろいろ見方とか賛否はあるかもしれないが、手間とコストを抑えつつ、使い手が欲するフォントの需要と使いやすさを両立したフォントを作り続けてくれる点で、僕はやっぱりダイナフォントが好きだ。
それでは、また来月の「フォントの独り言」でお会いしましょう。ィヨロシク!!
【参考にしたサイトやカタログなど】
・『ダイナフォント総合カタログ 2020年版』ダイナコムウェア株式会社
↓同カタログのPDF版が見られます。
https://www.dynacw.co.jp/support/support_download_list.aspx?sid=39
・DFP康印体W4 TrueType for Win|DynaFont
↓任意の文字列を打ち込んで試し打ちができます。
https://www.dynacw.co.jp/product/product_download_detail.aspx?sid=3349
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