#21 A1ゴシックブームの謎 2019/09/10
2017年秋頃、モリサワが「A1(エーワン)ゴシック」というフォントをリリースした。モリサワいわく、「A1明朝の基本となる骨格を参照して作成された、オールドスタイルのゴシック体ファミリー」。線と線が重なる部分に墨だまりが表現され、線端はわずかに角丸処理されている、ちょっとだけポテッとして柔らかい印象のゴシック体。モリサワの人気基本書体である、モダンなスタイルの「新ゴ」や、セリフのある「中ゴシックBBB」「太ゴB101」「見出ゴMB31」「ゴシックMB101」などとも異なる印象だ。
そんなA1ゴシックはリリース直後から急激に広まり、リリースから間もなく2年になる現在ではキャッチコピーや書籍のタイトルなどでよく見るフォントの1つになった気がしている。このフォントが登場する前は、汎用性が高く、ガッチリしていて説得力やインパクトも発揮できるゴシック体というとMB101という印象だったが、その常識も変わってきそうな勢いだ。
確かに、オールドタイプのゴシック体が好きな人にはウケるデザインだと思う。中ゴシックや太ゴシックにもうひと味欲しい!と思う時に本文用のフォントとして用いるならコレかな。長文でなければ、軽く「読ませる」文字としても向いていると思う。A1明朝と同じ紙面で使ってみても良いかもね。
しかし、どういうことなのか現実の使用例は、先述したようにキャッチコピーや書籍のタイトルなど、「力強さ」や「説得力」が求められる場面が多い。そういう場面で使われるフォントとしては、どう考えても物足りないと思う。骨格はシッカリしているのに、墨だまりや線端をわずかに丸くした加工のせいで、文字の印象が弱く?ぼやけて?しまっているように思える。こういった加工も使われ方によっては悪くないんだけど、「力強さ」「説得力」が必要な場面には、あまり適していないよね…。それに、必ずしも太いウェイトを使わずあえて細いウェイトを使って組み方で力強さや説得力を発揮してくれても良いのに(他のフォントではそういう使用例もある)、A1ゴシックの場合は、一番太いB(ウェイト)ばかり多用され、文字の太さだけでお茶濁しをされているようにさえ感じる。
フォントベンダーから新しいフォントがリリースされる度にちょっとしたブームになり、世の中に出回るいろいろな媒体(印刷物、Web、テレビテロップなど)で、やたらめったらそのフォントが使われる現象が起きる。それも適した場面で使われるのなら全く構わないが、明らかにダサいでしょ?プロの仕事としてはどうなの?と思う使われ方をすることもある。時間と共に、そういう現象は落ち着いていくけどね。
プロだっていろいろなやり方を試さないと、そのフォントがどういう場面に適しているか、使い方次第でどういう見え方になるのか判らない、というのも理解できる。ただ……A1ゴシックに関しては、明らかに「そんなに適していない」場面で「使われ過ぎている」ように思う。時代と共に人気のフォントというのは変わってくるのだろうけど、僕はあまり腑に落ちない。
A1ゴシックの骨格自体はシッカリしているので、この骨格で普通にセリフのあるゴシック体を作ってくれたら人気が出そうな気がするんだけどね。
とはいえ、実際に様々な使い方を試さないと判らないフォントの可能性というものはある。もしかしたらこの先、こんなカタイ頭の僕をも納得させてくれるA1ゴシックの使い方が見つかるかもしれないしね。プロの方々が「A1ゴシック」を使った良い仕事をしてくれることに期待しています。
それでは、また来月の「フォントの独り言」でお会いしましょう。ィヨロシク!!
【参考にしたサイト】(2019.8.11閲覧)・A1ゴシックの特徴|モリサワhttps://www.morisawa.co.jp/fonts/specimen/3702※上記リンク先では任意の文字列を打ち込んで試し打ちができます。
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2017年秋頃、モリサワが「A1(エーワン)ゴシック」というフォントをリリースした。
モリサワいわく、「A1明朝の基本となる骨格を参照して作成された、オールドスタイルのゴシック体ファミリー」。
線と線が重なる部分に墨だまりが表現され、線端はわずかに角丸処理されている、ちょっとだけポテッとして柔らかい印象のゴシック体。
モリサワの人気基本書体である、モダンなスタイルの「新ゴ」や、セリフのある「中ゴシックBBB」「太ゴB101」「見出ゴMB31」「ゴシックMB101」などとも異なる印象だ。
そんなA1ゴシックはリリース直後から急激に広まり、リリースから間もなく2年になる現在ではキャッチコピーや書籍のタイトルなどでよく見るフォントの1つになった気がしている。
このフォントが登場する前は、汎用性が高く、ガッチリしていて説得力やインパクトも発揮できるゴシック体というとMB101という印象だったが、その常識も変わってきそうな勢いだ。
確かに、オールドタイプのゴシック体が好きな人にはウケるデザインだと思う。
中ゴシックや太ゴシックにもうひと味欲しい!と思う時に本文用のフォントとして用いるならコレかな。
長文でなければ、軽く「読ませる」文字としても向いていると思う。
A1明朝と同じ紙面で使ってみても良いかもね。
しかし、どういうことなのか現実の使用例は、先述したようにキャッチコピーや書籍のタイトルなど、「力強さ」や「説得力」が求められる場面が多い。
そういう場面で使われるフォントとしては、どう考えても物足りないと思う。
骨格はシッカリしているのに、墨だまりや線端をわずかに丸くした加工のせいで、文字の印象が弱く?ぼやけて?しまっているように思える。
こういった加工も使われ方によっては悪くないんだけど、「力強さ」「説得力」が必要な場面には、あまり適していないよね…。
それに、必ずしも太いウェイトを使わずあえて細いウェイトを使って組み方で力強さや説得力を発揮してくれても良いのに(他のフォントではそういう使用例もある)、A1ゴシックの場合は、一番太いB(ウェイト)ばかり多用され、文字の太さだけでお茶濁しをされているようにさえ感じる。
フォントベンダーから新しいフォントがリリースされる度にちょっとしたブームになり、世の中に出回るいろいろな媒体(印刷物、Web、テレビテロップなど)で、やたらめったらそのフォントが使われる現象が起きる。
それも適した場面で使われるのなら全く構わないが、明らかにダサいでしょ?プロの仕事としてはどうなの?と思う使われ方をすることもある。
時間と共に、そういう現象は落ち着いていくけどね。
プロだっていろいろなやり方を試さないと、そのフォントがどういう場面に適しているか、使い方次第でどういう見え方になるのか判らない、というのも理解できる。
ただ……A1ゴシックに関しては、明らかに「そんなに適していない」場面で「使われ過ぎている」ように思う。
時代と共に人気のフォントというのは変わってくるのだろうけど、僕はあまり腑に落ちない。
A1ゴシックの骨格自体はシッカリしているので、この骨格で普通にセリフのあるゴシック体を作ってくれたら人気が出そうな気がするんだけどね。
とはいえ、実際に様々な使い方を試さないと判らないフォントの可能性というものはある。
もしかしたらこの先、こんなカタイ頭の僕をも納得させてくれるA1ゴシックの使い方が見つかるかもしれないしね。
プロの方々が「A1ゴシック」を使った良い仕事をしてくれることに期待しています。
それでは、また来月の「フォントの独り言」でお会いしましょう。ィヨロシク!!
【参考にしたサイト】(2019.8.11閲覧)
・A1ゴシックの特徴|モリサワ
https://www.morisawa.co.jp/fonts/specimen/3702
※上記リンク先では任意の文字列を打ち込んで試し打ちができます。
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