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#13 LETSのラインナップから消える白舟書体
2019/01/10
皆様、新年あけましておめでとうございます。
2019年も月1回の「フォントの独り言」をよろしくお願いいたします。

――2018年12月3日、フォントの年間ライセンス「LETS」を提供している大手フォントベンダーのフォントワークスから衝撃的なニュースが発表された。
フォントワークス・白舟書体それぞれの発表によると、LETSのラインナップに含まれていた白舟書体が、契約期間満了に伴い、取り扱いを終了するというのだ。
12月10日までにLETSを新規契約した人は、2019年6月24日まで白舟書体を使うことができたみたいだけど、12月11日以降に契約を始めた人は、もう白舟書体はインストールできなくなるみたい。
また、フォント名の頭文字がHOT(HTT)から始まるフォントだけでなく、FOT(FTT)から始まるフォントで白舟書体が権利を持っている万葉書体も、LETSのラインナップからは外れることになるらしい。

とはいえ白舟書体は、自社のフォントを使い続けられる新しい年間ライセンスの提供をするため、準備を進めている…ことも表明している。
(一時期LETSのラインナップに白舟書体が加わる前にフォントワークスが提供していた「白舟LETS」のようなものだろうか? まだ詳しくはわからないが…)

ただ僕は、今回のニュースを聞いたことで、僕の中にあった、「フォントの年間ライセンスは、(契約料を支払い続ければ)同一のフォントを互換性等を保って、確実に、安定的に提供してくれる」という神話(?)が崩壊した。
どうしてそう思っていたかというと、フォントの年間ライセンスを提供しているベンダーって、例えばStd→Pro→Pr5→Pr6のように収容文字数を拡張したり、軽微な不具合を改善したりした新しいバージョンのフォントがリリースされたりしても、古いバージョンのフォントも継続して提供してくれることが多いから。
Pr6(N)が主流の今でも、古いPr5・Pro・Stdもラインナップの一部に含めてくれていることが多いのは、互換性を保つため…だよね。
僕はプロとしてデザインの仕事をしたことがないけど、仕事でフォントを扱うのに、同じタイプフェイスでもフォントの名前やバージョンが違うようなフォントは互換性がないし、データをやり取りする時に困ったりすることもあると聞いたことがある。
だから、どんなデザイン事務所や印刷会社でも、「同一の年間ライセンス(LETSならLETS)を契約している限り、皆常に確実に全く同じフォントが使える」環境というのは、確実に保たれ続けなければならない、と僕は思っていた。

しかしながら、フォントの年間ライセンスも、決して必ずしも安定したものではない、ということなのだろう…。
ユーザーの立場に立てば、毎年数万も払い続けているのに、こういう発表はないだろう、という気持ちも残るけどね。

ただ、僕が個人的に懸念していることは、白舟書体を特に愛用していたんじゃないか?と思うテレビテロップから白舟書体の使用例が減ってしまうこと。
(テレビテロップに限らずだけど)毛筆ならではの力強さが欲しい、でも一から手書きにすると手間もお金もかかるし…なんて場面で、白舟書体はかなり貢献できていただろうしね。
楷書体や行書体などのような標準的な毛筆フォント以外にも、毛筆で書いたデザインフォントもかなり充実しているし、フォントワークスには出せない個性があったのだと思う。
そのためか、白舟書体を準定番フォントとして導入していた番組もあったくらいだ。
先述したように白舟書体は、新しい年間ライセンスを提供するため準備を進めているそうだが、「LETS一本だけ契約していれば白舟書体も使えてコストを抑えられたのに…」と考える人も、中にはいるんじゃないかと思う。
この決定が下されて、各局や番組の制作会社はどう動くか…。
引き続き白舟書体を使うために、早速同社の新しい年間ライセンスを契約しようではないか!と動いてくれる人が、少しでも多く出てくれば良いけどね…。

また、数年前に、MORISAWA PASSPORTのラインナップに昭和書体の一部を加えたモリサワにも言えることだが、クオリティの高い毛筆フォントって、いろんなフォントのデザインができる凄腕のデザイナーが多く関わっていそうな大手のフォントベンダーでさえ、簡単には作れないのだと思う。
そもそも迫力のある毛筆フォントを作るには、一流の書道家に依頼して、膨大な文字数をバランス良く書いてもらい、かつそれを別の人が元の文字の味を損なわないように注意しながらデジタルフォント化する…。
有料で提供されている毛筆フォントでも、この課題の突破は難しいのか、ただ筆で書いた文字を各グリフ(フォントの各文字を収容する枠)に収めただけで、フォントとしての使いやすさのバランスがあまり考えられていないように思うものも大変多くある。
美しい筆文字を書ける書道家だけでなく、アナログからデジタルに変換する(デジタルフォント化する)過程で、極力元の文字の質を落とさないように変換できる技術を持った人も必要になるし、一般的なゴシック体や明朝体を作ることとはまた違う苦労があると思うんだよ。
白舟書体や昭和書体は、そういった大手フォントベンダーでさえなかなかクリアできない毛筆フォント制作への課題をクリアしていたから、フォントワークスとモリサワは、それぞれを味方につけたのではないだろうか?
大手フォントベンダーのように幅広いニーズに応えるのではなく、数少ない、けど実はとても重要な特定のニーズをとことん追求できるのが、小さいベンダーの強みだと思う。

細かい事情がわからないので何とも言えない所もあるけど、フォントワークスが自社だけでは難しかったニーズに応える手助けをしてくれた白舟書体を手放したのは、それなりに痛手になったんじゃないかな…。
ましてや、使えるフォントの数が減って、なのにお値段(契約料)据え置きというのはユーザーにとってもきつい気がする。
また、フォントワークスのこの動きを見ていると、フォント事業では大成功したのかもしれないけど、成功の波に乗ってどんどん独りよがりな考え方を持つようにもなってきているような気もする…。
組織でその会社の一端を担っている人や、自分で事業をやっている人など、仕事をする全ての人が、こうして成功している会社の「悪い」一面をあえてしっかり見て、反面教師にして学んでいくことも必要だとわかるね。

フォントワークスが今後、白舟書体に負けないような毛筆フォントを、自社で開発してみせるのか、それとももっと別の方向に行くのか…。
僕個人的には先述したテレビテロップの世界にどういう影響を与えるか特に気になっている(笑)。

それでは、また来月の記事でお会いしましょう。ィヨロシク!!

【参考にしたニュース記事】
・https://fontworks.co.jp/news/archives/297(2018.12.15閲覧)
・http://www.hakusyu.com/lets.htm(2018.12.15閲覧)
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