#11 見慣れたフォントに感じる“デフォルト臭” 2018/11/10(Sat)
フォントをよく知っている人なら誰しも、OS標準フォントを使うことには多かれ少なかれ抵抗を覚えると思う。やっぱり“デフォルト臭”が強くなると嫌になるものだ。個性が出せなくなるし、チープに見えるからね。
しかし最近は、チープに思えるOS標準フォント以外にも、長年高品質なフォントが搭載されていなかったWinや、スマホにも大手フォントベンダーの高品質なフォントが標準搭載されるようになってきた。前回のフォントの独り言#10でも述べたAdobe Fonts(旧Typekit)のようなサービスも、Adobe CCを使っている(デザインや創作活動をやっている)人ならタダ同然の感覚で使えるので、OSに標準搭載されているフォントというわけではないけど、それに準じたフォントとみなすことはできるだろう。Typekitの頃とは違い、2018年10月に改称されて以降は、いろいろと面倒な利用制限が撤廃され、より使いやすい形で提供されるようになったようだ。また、モリサワは「MORISAWA PASSPORT アカデミック版」や「MORISAWA BIZ+」、フォントワークスは「学生向けLETS」や「mojimo」など、ユーザーのニーズに合わせて、プロ向けの高品質なフォントにいくらかの使用制限(使えるフォントの数・形式やライセンスなど)を設け、より安く提供するサービスも始まっている。
このようにして、プロ用の高品質なフォントはプロだけが使えるものであり、アマチュアには高嶺の花である、という考えが徐々に廃れ、アマチュアでもより気軽にプロ用の高品質なフォントを使えるようになってきた。そのため、最近では、個人の制作物(同人誌など)でも、プロ用の高品質なフォントの使用例が数多く見られるようになった。プロはプロの仕事として良い文字組をすれば良いし、アマチュアはアマチュアの感覚で、思うままに多彩なフォントを使って、文字組が楽しめるようになったわけだからね。とても喜ばしいことだと思う。
だけどそんな中で、僕はちょっとした危惧を抱いている。それは、気軽に使えるようになることで、プロ用の高品質なフォントでさえも“デフォルト臭”が感じられるようになること。厳密にはデフォルト臭…とは少し違うものかもしれないが、そのフォントの使用例を「見慣れてしまう」ことで、良いフォントであっても、「またこのフォントか…」と思ってしまうことね。
個人が気軽に扱えるフォントが、まだOS標準フォントやフリーフォントくらいだった頃なら、アマチュアは、少し高価なフォントを1つや2つ買って使ってみせることで、簡単に個性を出すことができたと思う。そしてプロはプロで、大手フォントベンダーの良いフォントを使って、良い文字組をすることで、「プロの仕事」をまっとうできたんじゃないかと思う。
しかし今は、モリサワやフォントワークスのような大手フォントベンダーのフォントが気軽に使える土壌が整ってきたことで、少々それが難しくなってきたように思う。フォントそのものがとても良い物でも、誰もが気軽に使えるようになったことで、デフォルト臭が感じられるようになり、成果物を目にした人が「またこのフォントか…」という思いに駆られ、チープな印象を抱いてしまう恐れがあるのだ。また、アマチュアはなかなかプロのような良い文字組ができないから、そういった悪い使用例が散見されるようになれば、高品質なフォントでも悪いイメージができかねない。
フォントオタクであれば皆、「このフォントは駄目、こんなフォント使うなよ…。それに比べてこのフォントは素晴らしい☆」という考え方を多かれ少なかれ持っているだろう。だけどきっとどんなフォントも、見慣れてしまい、デフォルト臭が感じられるようになれば、うんざりしてしまうのだと思う。MS Officeにバンドルされている創英角ポップ体が嫌われているのも、フォントの品質よりも、デフォルト臭や、ユーザーの使い方の問題だと僕は思っている。(創英角ポップ体については、僕が過去に書いた記事も参照して頂きたい。→https://slimedaisuki.blog.fc2.com/blog-entry-2821.html)どういうフォントも、創英角ポップ体の件と同様に、当たり前のように(誰もが)使えるようになれば、濫用されるようになるし、使用例を見る側もうんざりしてくるんだよね。
そんな気持ちを払拭するためには、皆もっと、モリサワやフォントワークスのフォントだけでない、人と違うフォントに興味を持つ…か、デフォルト臭なんて忘れさせるような格好良い文字組に挑戦するか、だね。
ちなみに僕だったら、良い文字組への挑戦ではなく、人とは違うフォントを使うことを選ぶと思う。なぜかって? そんなに良い文字組ができる自信がないから(笑)。でも僕の理想は、「人と違うフォント」で、「良い文字組」をしてみることかな。マニアックなフォントで、「どうしてそんなフォントが好きなの?」という人をアッと言わせるような、格好良い文字組に挑戦してみたい。
それでは、また来月の記事でお会いしましょう。ィヨロシク!!
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フォントをよく知っている人なら誰しも、OS標準フォントを使うことには多かれ少なかれ抵抗を覚えると思う。
やっぱり“デフォルト臭”が強くなると嫌になるものだ。
個性が出せなくなるし、チープに見えるからね。
しかし最近は、チープに思えるOS標準フォント以外にも、長年高品質なフォントが搭載されていなかったWinや、スマホにも大手フォントベンダーの高品質なフォントが標準搭載されるようになってきた。
前回のフォントの独り言#10でも述べたAdobe Fonts(旧Typekit)のようなサービスも、Adobe CCを使っている(デザインや創作活動をやっている)人ならタダ同然の感覚で使えるので、OSに標準搭載されているフォントというわけではないけど、それに準じたフォントとみなすことはできるだろう。
Typekitの頃とは違い、2018年10月に改称されて以降は、いろいろと面倒な利用制限が撤廃され、より使いやすい形で提供されるようになったようだ。
また、モリサワは「MORISAWA PASSPORT アカデミック版」や「MORISAWA BIZ+」、フォントワークスは「学生向けLETS」や「mojimo」など、ユーザーのニーズに合わせて、プロ向けの高品質なフォントにいくらかの使用制限(使えるフォントの数・形式やライセンスなど)を設け、より安く提供するサービスも始まっている。
このようにして、プロ用の高品質なフォントはプロだけが使えるものであり、アマチュアには高嶺の花である、という考えが徐々に廃れ、アマチュアでもより気軽にプロ用の高品質なフォントを使えるようになってきた。
そのため、最近では、個人の制作物(同人誌など)でも、プロ用の高品質なフォントの使用例が数多く見られるようになった。
プロはプロの仕事として良い文字組をすれば良いし、アマチュアはアマチュアの感覚で、思うままに多彩なフォントを使って、文字組が楽しめるようになったわけだからね。
とても喜ばしいことだと思う。
だけどそんな中で、僕はちょっとした危惧を抱いている。
それは、気軽に使えるようになることで、プロ用の高品質なフォントでさえも“デフォルト臭”が感じられるようになること。
厳密にはデフォルト臭…とは少し違うものかもしれないが、そのフォントの使用例を「見慣れてしまう」ことで、良いフォントであっても、「またこのフォントか…」と思ってしまうことね。
個人が気軽に扱えるフォントが、まだOS標準フォントやフリーフォントくらいだった頃なら、アマチュアは、少し高価なフォントを1つや2つ買って使ってみせることで、簡単に個性を出すことができたと思う。
そしてプロはプロで、大手フォントベンダーの良いフォントを使って、良い文字組をすることで、「プロの仕事」をまっとうできたんじゃないかと思う。
しかし今は、モリサワやフォントワークスのような大手フォントベンダーのフォントが気軽に使える土壌が整ってきたことで、少々それが難しくなってきたように思う。
フォントそのものがとても良い物でも、誰もが気軽に使えるようになったことで、デフォルト臭が感じられるようになり、成果物を目にした人が「またこのフォントか…」という思いに駆られ、チープな印象を抱いてしまう恐れがあるのだ。
また、アマチュアはなかなかプロのような良い文字組ができないから、そういった悪い使用例が散見されるようになれば、高品質なフォントでも悪いイメージができかねない。
フォントオタクであれば皆、「このフォントは駄目、こんなフォント使うなよ…。それに比べてこのフォントは素晴らしい☆」という考え方を多かれ少なかれ持っているだろう。
だけどきっとどんなフォントも、見慣れてしまい、デフォルト臭が感じられるようになれば、うんざりしてしまうのだと思う。
MS Officeにバンドルされている創英角ポップ体が嫌われているのも、フォントの品質よりも、デフォルト臭や、ユーザーの使い方の問題だと僕は思っている。
(創英角ポップ体については、僕が過去に書いた記事も参照して頂きたい。
→https://slimedaisuki.blog.fc2.com/blog-entry-2821.html)
どういうフォントも、創英角ポップ体の件と同様に、当たり前のように(誰もが)使えるようになれば、濫用されるようになるし、使用例を見る側もうんざりしてくるんだよね。
そんな気持ちを払拭するためには、皆もっと、モリサワやフォントワークスのフォントだけでない、人と違うフォントに興味を持つ…か、デフォルト臭なんて忘れさせるような格好良い文字組に挑戦するか、だね。
ちなみに僕だったら、良い文字組への挑戦ではなく、人とは違うフォントを使うことを選ぶと思う。
なぜかって? そんなに良い文字組ができる自信がないから(笑)。
でも僕の理想は、「人と違うフォント」で、「良い文字組」をしてみることかな。
マニアックなフォントで、「どうしてそんなフォントが好きなの?」という人をアッと言わせるような、格好良い文字組に挑戦してみたい。
それでは、また来月の記事でお会いしましょう。ィヨロシク!!
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