#07 Adobeの無料フォントに生まれる懸念? 2018/07/10(Tue)
最近、Adobeから『源ノ角ゴシック』『源ノ明朝』(以下、源ノフォント)がリリースされたことで、アマチュアでも気軽に高品質なゴシック体・明朝体が使えるようになった。同じライセンスを引き継ぎさえすれば、派生フォントも作ることができる(有料での販売はできないけど)。同様に、特に追加契約や使用料などなく、アプリに組み込んで配布したり、Webフォントとして使用したりもできる。
しかしこれって、長年ゴシック体や明朝体を主軸に作り、販売してきたフォントベンダーにとってはどうなのだろう。こういうライセンスのフォントが出てきてしまうと、昔からある他のフォントベンダーは苦しくならないのかな…?特にフォントを組み込みで使えるように販売していて、それによって利益を得ているベンダーにとっては、自社フォントが源ノフォントに取って代わられていく可能性もあるわけだし、死活問題にならないだろうか?実際の所、各ベンダーがどう感じているのかはわからないけど、今回はそれについて、僕の思うことを話したい。
Adobeの源ノフォントの場合、他の多くの和文フォントと違い、かなり自由なライセンスで配布されているだけでなく、多言語対応もしているし、太さも複数揃っていて、完成度も高いよね。有料のフォントでさえ、そこまで網羅したフォントというのは非常に少ない。まず、かなと英数字、記号類、そして第一・第二水準漢字と拡張文字を収容して配布しようとすれば、数千文字を作らなきゃいけなくなって、個人のクリエイターであれば、それらを1人で揃えなきゃならないとなっただけでも大変なことになるだろう。それに加えて、そのフォントをファミリー化しようと思えば、またさらなる手間がかかる。さらに、プロ用のOpenTypeフォントで、文字数が非常に多いAdobe Japan1-6(Pr6)にまで対応しようとすれば、まず1人では作れないだろう。大手のフォントベンダーでもいろんな人が制作に携わり、納期も出てくる中で一定の品質を保って、手をかけて作らなきゃいけなくなるからね。
もちろん、同じようなゴシック体・明朝体のフォントでも、ベンダーごとに時間や手間、コストのかけ方は違うだろうし、フォントのターゲット層やコンセプトも異なるだろうから、販売形態についても、多様な在り方があっても良いだろう。その中で、フォントの価格が安いとか高いとか、ライセンス的に使い良いとか使いづらいとかいう差が出てきて、そこで競争が起きる分には問題ないと思う。
だけど、源ノフォントのように、無料で追加契約もなしで、派生フォントの作成や組み込みでの使用まで認めてしまうとどうだろうか。
ベンダーによって考え方は異なるものの、多くのベンダーは、まず印刷物やWebサイトで使う場合のことを想定してフォントを販売している。それに加えて、映像のテロップや商標登録するロゴなどで使う時、あるいはWebフォントやアプリへの組み込みなど、再配布に繋がる使い方をする時は追加使用料を取る…など、ユーザーのニーズに合わせてビジネスを拡大し、その都度利益を得ている。
源ノフォントのように、それが(ほぼ)全部無料でできてしまうようになると、僕の中では、次の3つの懸念が生まれてくる。・ただでさえフォントのライセンス問題は甘く見られがちなのに、ユーザーから「(フォントも含めて)ビジネスは代価を支払って成り立つもの」という考え方が失われてしまうのでは?・ユーザーの中で、「安く使えれば(無料なら)それで良い」という考え方が強くなり、本当に良いフォントを見抜く力が弱くなるのでは?・フォントを組み込みで使ってもらうことで大きな利益を得ているベンダーが苦しい状況に立たされないか?(先述したように、組み込みでも追加使用料なしで使える源ノフォントに取って代わられる可能性があるため)
何もかも無料で提供する余裕のないフォントベンダーやクリエイターが大半だし、ユーザーがそれに代価を支払って、フォントを使わなきゃいけないのも当然だと思う。
だから、ユーザーにとってはちょっと酷な話かもしれないけど、それなりのフォントになれば、売る側も買う側も意識して、それなりの価格で提供(購入)するべきなんじゃないかな?源ノフォントの例はとても太っ腹だと思うけど、完成度の高いフォントを、無料で提供するベンダーが1社でも出てきてしまえば、同じような販売方法ができないベンダーにとっては、きつくなるんじゃないかと思うし…。
フォントに一定の代価が発生して、その代価を支払うことで、そのフォントに代価相応(もしくはそれ以上)の価値を見いだせる、というものだと思うんだよ。良いフォントだからこそ、無料にしてしまうと、ユーザーがフォントの価値や、ライセンス問題を甘く見てしまうのでは、という懸念が、僕の中では生まれてくるんだよな。ユーザーにとってはお金がかからないに越したことはないけど、たとえ余裕があるベンダーでも、良いフォントはそれなりの価格で提供して欲しい…というのが僕の願いだ。
それでは、来月の記事をお楽しみに~。ィヨロシク!!
スポンサーサイト
最近、Adobeから『源ノ角ゴシック』『源ノ明朝』(以下、源ノフォント)がリリースされたことで、アマチュアでも気軽に高品質なゴシック体・明朝体が使えるようになった。
同じライセンスを引き継ぎさえすれば、派生フォントも作ることができる(有料での販売はできないけど)。同様に、特に追加契約や使用料などなく、アプリに組み込んで配布したり、Webフォントとして使用したりもできる。
しかしこれって、長年ゴシック体や明朝体を主軸に作り、販売してきたフォントベンダーにとってはどうなのだろう。こういうライセンスのフォントが出てきてしまうと、昔からある他のフォントベンダーは苦しくならないのかな…?
特にフォントを組み込みで使えるように販売していて、それによって利益を得ているベンダーにとっては、自社フォントが源ノフォントに取って代わられていく可能性もあるわけだし、死活問題にならないだろうか?
実際の所、各ベンダーがどう感じているのかはわからないけど、今回はそれについて、僕の思うことを話したい。
Adobeの源ノフォントの場合、他の多くの和文フォントと違い、かなり自由なライセンスで配布されているだけでなく、多言語対応もしているし、太さも複数揃っていて、完成度も高いよね。
有料のフォントでさえ、そこまで網羅したフォントというのは非常に少ない。
まず、かなと英数字、記号類、そして第一・第二水準漢字と拡張文字を収容して配布しようとすれば、数千文字を作らなきゃいけなくなって、個人のクリエイターであれば、それらを1人で揃えなきゃならないとなっただけでも大変なことになるだろう。それに加えて、そのフォントをファミリー化しようと思えば、またさらなる手間がかかる。
さらに、プロ用のOpenTypeフォントで、文字数が非常に多いAdobe Japan1-6(Pr6)にまで対応しようとすれば、まず1人では作れないだろう。大手のフォントベンダーでもいろんな人が制作に携わり、納期も出てくる中で一定の品質を保って、手をかけて作らなきゃいけなくなるからね。
もちろん、同じようなゴシック体・明朝体のフォントでも、ベンダーごとに時間や手間、コストのかけ方は違うだろうし、フォントのターゲット層やコンセプトも異なるだろうから、販売形態についても、多様な在り方があっても良いだろう。
その中で、フォントの価格が安いとか高いとか、ライセンス的に使い良いとか使いづらいとかいう差が出てきて、そこで競争が起きる分には問題ないと思う。
だけど、源ノフォントのように、無料で追加契約もなしで、派生フォントの作成や組み込みでの使用まで認めてしまうとどうだろうか。
ベンダーによって考え方は異なるものの、多くのベンダーは、まず印刷物やWebサイトで使う場合のことを想定してフォントを販売している。
それに加えて、映像のテロップや商標登録するロゴなどで使う時、あるいはWebフォントやアプリへの組み込みなど、再配布に繋がる使い方をする時は追加使用料を取る…など、ユーザーのニーズに合わせてビジネスを拡大し、その都度利益を得ている。
源ノフォントのように、それが(ほぼ)全部無料でできてしまうようになると、僕の中では、次の3つの懸念が生まれてくる。
・ただでさえフォントのライセンス問題は甘く見られがちなのに、ユーザーから「(フォントも含めて)ビジネスは代価を支払って成り立つもの」という考え方が失われてしまうのでは?
・ユーザーの中で、「安く使えれば(無料なら)それで良い」という考え方が強くなり、本当に良いフォントを見抜く力が弱くなるのでは?
・フォントを組み込みで使ってもらうことで大きな利益を得ているベンダーが苦しい状況に立たされないか?(先述したように、組み込みでも追加使用料なしで使える源ノフォントに取って代わられる可能性があるため)
何もかも無料で提供する余裕のないフォントベンダーやクリエイターが大半だし、ユーザーがそれに代価を支払って、フォントを使わなきゃいけないのも当然だと思う。
だから、ユーザーにとってはちょっと酷な話かもしれないけど、それなりのフォントになれば、売る側も買う側も意識して、それなりの価格で提供(購入)するべきなんじゃないかな?
源ノフォントの例はとても太っ腹だと思うけど、完成度の高いフォントを、無料で提供するベンダーが1社でも出てきてしまえば、同じような販売方法ができないベンダーにとっては、きつくなるんじゃないかと思うし…。
フォントに一定の代価が発生して、その代価を支払うことで、そのフォントに代価相応(もしくはそれ以上)の価値を見いだせる、というものだと思うんだよ。
良いフォントだからこそ、無料にしてしまうと、ユーザーがフォントの価値や、ライセンス問題を甘く見てしまうのでは、という懸念が、僕の中では生まれてくるんだよな。
ユーザーにとってはお金がかからないに越したことはないけど、たとえ余裕があるベンダーでも、良いフォントはそれなりの価格で提供して欲しい…というのが僕の願いだ。
それでは、来月の記事をお楽しみに~。ィヨロシク!!
スポンサーサイト
コメント