#65 「喋る」デザインフォント? G2サンセリフ 2023/05/10(Wed)
2011年に同社のフォント事業がモリサワに譲渡されてからは、モリサワから販売されるようになった。
現在では「Morisawa Fonts」か旧サービスの「MORISAWA PASSPORT」、もしくは「TypeBank PASSPORT」を契約していれば誰でも利用できる。
今回は「G2サンセリフ」について、思うことを書いてみようと思う。
まずG2サンセリフとは、こんなフォント↓
ガッチリとした印象があり、文字を見る人の目線を真っ先に引きつけてくれそうなデザインだ。
ウェイトはBとUの2種類なので、見出しやキャッチコピーで力を発揮してくれそうだね。
見る人の目線を引きつけてくれるからか、テレビやネット動画など映像のテロップでもしばしば使われている。
また、文字を構成するパーツに直線と曲線が絶妙なバランスで使われているので、文字を組むと「どっしり構えた」印象が生まれ、使い手が伝えたいメッセージに「メリハリ」や「リズム感」を生んでくれる。
この「どっしり構えた」印象はG2サンセリフのようなフォントでなくとも完成度の高いゴシックや明朝ならば表現できるが、これらのフォントではあまり面白みが感じられないことがある。
もちろん、報道番組でアナウンサーが話すように情報を淡々と伝えたい場面では、ゴシックや明朝は重要な役目を果たしてくれるんだけどね。
これらのフォントは情報を冷静かつ的確に伝えてくれるんだけど、事務的で冷たい印象が強く感じられ、かえってメッセージが伝わりにくいのでは?と感じることもある。
だけどG2サンセリフは、ゴシックや明朝では出しきれない「ワンランク上の説得力」を発揮してくれる感じだ。
あくまでもG2サンセリフはゴシックでも明朝でもないデザインフォントなんだけど、多くのデザインフォントに足りない「重厚感」や「緊張感」を持っているため、このフォントで打ち込んだメッセージからはより強い説得力が感じられる。
同時に、太いフォントだからこそ表現できる「無邪気さ」「優しさ」も感じられるので、やはりゴシックや明朝では伝えきれない言葉を伝えてくれるフォントだと思うんだよ。
例えば、数年前から某飲料メーカーのペットボトル飲料のラベルに「リサイクルしてね」のロゴが印字されるようになり、そのロゴに「G2サンセリフ」が使われている(見たことある人もいるんじゃないかな)。
初めて僕がこの使用例を見た時に驚いたのは、そのメッセージから感じた印象だ。
それまでG2サンセリフに対して僕が抱いていたイメージは、「カッコイイ」とか「力強い」くらい程度のものだったし、別段使い道があるフォントだとは思っていなかった。
しかしこのラベルの「リサイクルしてね」からは「優しく」、でも「切実な」印象が感じられた。
この「リサイクルしてね」にゴシックや明朝などが使われていたら、僕はこのメッセージに見向きもしなかったと思う。
大切なことを優しく訴えかける力を持つフォントなんだと気付けたし、まさに目からウロコだったよ。
フォントから、あるいは文字から、「あなた(読み手)とコミュニケーションを取りたい!」という「意思」が感じられる。
フォントを使う人が読み手にメッセージを伝えて、それに対して何らかのアクションを起こしてもらう(コミュニケーションの)ためにいろんなデザインのフォントが存在していると僕は思うのだが、G2サンセリフはまさに文字(使い手)と読み手との間でコミュニケーションを成り立たせてくれる、そんなフォントだと思った。
「リサイクルしてね」というカジュアルな言い回しだけど大切なメッセージにあえて「G2サンセリフ」をチョイスし、このフォントの新たな可能性に気付かせてくれたデザイナーさんには心から感謝したい。
ちなみにこのG2サンセリフ、長らくJIS第二水準漢字(一般名詞での使用頻度は低めだが人名や地名などではしばしば使われる漢字)の半分以上が使えなかったことに加え、使用頻度の高い漢字にも読みにくいもの(略字)があったりと、少々使いにくい面も併せ持っていた。
(不足文字については過去に僕が自分のブログで言及したので、気になる方は文末のURLからご覧ください。)
そこだけが惜しいなと思いずっともやもやしていたが、モリサワが2022年秋に不足していたJIS第二水準漢字を完全網羅し、漢字の略し方も見直して修正を加えた新しいバージョン(StdN版)の「G2サンセリフ」をリリースした。
きっと複数のユーザーから要望があったんだろうね。
より使いやすい形で生まれ変わったG2サンセリフ、どんな場面で使われていくのか、これからも注目していきたい。
それでは、また次回の「フォントの独り言」でお会いしましょう。ィヨロシク!!
【参考にしたサイト】(いずれも2023.4.15閲覧)
●G2サンセリフ-B(モリサワフォント見本)
「G2サンセリフ」で試し打ちができます(ウェイト切替も可)。
https://www.morisawa.co.jp/fonts/specimen/1646
●StdN版のG2サンセリフについて(モリサワ)
2022年にリリースされた新しいG2サンセリフ(StdN版)の変更点に関する記載あり。
https://www.morisawa.co.jp/support/faq/6900
●Morisawa Fonts
「G2サンセリフ」を含む多くのフォントがサブスク形式で利用可能。
https://morisawafonts.com/
●TypeBank PASSPORT
このサービスでも「G2サンセリフ」が利用可能。
https://www.morisawa.co.jp/products/fonts/typebank/passport/
【こちらも読んでいただけると嬉しい…】
●G2サンセリフ 一部未収録第二水準漢字の謎
takumiが2017年に不足文字について気になり言及した。
https://slimedaisuki.com/blog-entry-3782.html
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2011年に同社のフォント事業がモリサワに譲渡されてからは、モリサワから販売されるようになった。
現在では「Morisawa Fonts」か旧サービスの「MORISAWA PASSPORT」、もしくは「TypeBank PASSPORT」を契約していれば誰でも利用できる。
今回は「G2サンセリフ」について、思うことを書いてみようと思う。
まずG2サンセリフとは、こんなフォント↓
ガッチリとした印象があり、文字を見る人の目線を真っ先に引きつけてくれそうなデザインだ。
ウェイトはBとUの2種類なので、見出しやキャッチコピーで力を発揮してくれそうだね。
見る人の目線を引きつけてくれるからか、テレビやネット動画など映像のテロップでもしばしば使われている。
また、文字を構成するパーツに直線と曲線が絶妙なバランスで使われているので、文字を組むと「どっしり構えた」印象が生まれ、使い手が伝えたいメッセージに「メリハリ」や「リズム感」を生んでくれる。
この「どっしり構えた」印象はG2サンセリフのようなフォントでなくとも完成度の高いゴシックや明朝ならば表現できるが、これらのフォントではあまり面白みが感じられないことがある。
もちろん、報道番組でアナウンサーが話すように情報を淡々と伝えたい場面では、ゴシックや明朝は重要な役目を果たしてくれるんだけどね。
これらのフォントは情報を冷静かつ的確に伝えてくれるんだけど、事務的で冷たい印象が強く感じられ、かえってメッセージが伝わりにくいのでは?と感じることもある。
だけどG2サンセリフは、ゴシックや明朝では出しきれない「ワンランク上の説得力」を発揮してくれる感じだ。
あくまでもG2サンセリフはゴシックでも明朝でもないデザインフォントなんだけど、多くのデザインフォントに足りない「重厚感」や「緊張感」を持っているため、このフォントで打ち込んだメッセージからはより強い説得力が感じられる。
同時に、太いフォントだからこそ表現できる「無邪気さ」「優しさ」も感じられるので、やはりゴシックや明朝では伝えきれない言葉を伝えてくれるフォントだと思うんだよ。
例えば、数年前から某飲料メーカーのペットボトル飲料のラベルに「リサイクルしてね」のロゴが印字されるようになり、そのロゴに「G2サンセリフ」が使われている(見たことある人もいるんじゃないかな)。
初めて僕がこの使用例を見た時に驚いたのは、そのメッセージから感じた印象だ。
それまでG2サンセリフに対して僕が抱いていたイメージは、「カッコイイ」とか「力強い」くらい程度のものだったし、別段使い道があるフォントだとは思っていなかった。
しかしこのラベルの「リサイクルしてね」からは「優しく」、でも「切実な」印象が感じられた。
この「リサイクルしてね」にゴシックや明朝などが使われていたら、僕はこのメッセージに見向きもしなかったと思う。
大切なことを優しく訴えかける力を持つフォントなんだと気付けたし、まさに目からウロコだったよ。
フォントから、あるいは文字から、「あなた(読み手)とコミュニケーションを取りたい!」という「意思」が感じられる。
フォントを使う人が読み手にメッセージを伝えて、それに対して何らかのアクションを起こしてもらう(コミュニケーションの)ためにいろんなデザインのフォントが存在していると僕は思うのだが、G2サンセリフはまさに文字(使い手)と読み手との間でコミュニケーションを成り立たせてくれる、そんなフォントだと思った。
「リサイクルしてね」というカジュアルな言い回しだけど大切なメッセージにあえて「G2サンセリフ」をチョイスし、このフォントの新たな可能性に気付かせてくれたデザイナーさんには心から感謝したい。
ちなみにこのG2サンセリフ、長らくJIS第二水準漢字(一般名詞での使用頻度は低めだが人名や地名などではしばしば使われる漢字)の半分以上が使えなかったことに加え、使用頻度の高い漢字にも読みにくいもの(略字)があったりと、少々使いにくい面も併せ持っていた。
(不足文字については過去に僕が自分のブログで言及したので、気になる方は文末のURLからご覧ください。)
そこだけが惜しいなと思いずっともやもやしていたが、モリサワが2022年秋に不足していたJIS第二水準漢字を完全網羅し、漢字の略し方も見直して修正を加えた新しいバージョン(StdN版)の「G2サンセリフ」をリリースした。
きっと複数のユーザーから要望があったんだろうね。
より使いやすい形で生まれ変わったG2サンセリフ、どんな場面で使われていくのか、これからも注目していきたい。
それでは、また次回の「フォントの独り言」でお会いしましょう。ィヨロシク!!
【参考にしたサイト】(いずれも2023.4.15閲覧)
●G2サンセリフ-B(モリサワフォント見本)
「G2サンセリフ」で試し打ちができます(ウェイト切替も可)。
https://www.morisawa.co.jp/fonts/specimen/1646
●StdN版のG2サンセリフについて(モリサワ)
2022年にリリースされた新しいG2サンセリフ(StdN版)の変更点に関する記載あり。
https://www.morisawa.co.jp/support/faq/6900
●Morisawa Fonts
「G2サンセリフ」を含む多くのフォントがサブスク形式で利用可能。
https://morisawafonts.com/
●TypeBank PASSPORT
このサービスでも「G2サンセリフ」が利用可能。
https://www.morisawa.co.jp/products/fonts/typebank/passport/
【こちらも読んでいただけると嬉しい…】
●G2サンセリフ 一部未収録第二水準漢字の謎
takumiが2017年に不足文字について気になり言及した。
https://slimedaisuki.com/blog-entry-3782.html
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