#64 J-Font.comの大改革とLETSのさらなる大改悪 2023/04/10
先月、デザイン性の高い毛筆フォントで定評のある白舟書体が使えるフォントサービス「J-Font.com」(ジェイフォントドットコム)で新たに昭和書体の取り扱いが始まるという告知があった。
毛筆フォントファンの僕にとってはこれほどまでに嬉しいことがあるだろうかと思うくらい感動的なニュースだ。それに関連してフォントワークス(以下、FW)からは「昭和書体に関するサービス提供を終了」する旨の告知がなされ、それについてもいろいろと思うことがあった。今回はそれらの事柄について、思うことを綴ってみようと思う。
まずFWでの昭和書体の提供終了についてだが、昨年8月にFWから「昭和書体LETS」が提供終了するとの告知があった。この時点では昭和書体が全部使える同サービスの提供終了告知のみで、フォントワークスLETS(以下、LETS)に含まれる昭和書体(一部)の提供内容に変更は無い、とのことだった。しかし先月になり、当初の告知通りであれば継続して提供されるはずだったLETSやmojimo-fudeを含むFWが提供するすべてのサービスにおいて昭和書体の取り扱いが終了する告知があり、それに合わせてしれっと昨年8月の告知内容が変更(「LETSでの提供は継続される」旨が削除)されていた。FWいわく、昭和書体の提供終了は「株式会社昭和書体からのお申し出により」とのことだから、FWがヒドイことをしたせいで信頼関係が壊れたんじゃないかな、と思う…。実際、過去にも2018年頃に白舟書体がLETSから撤退を発表し、それと入れ替わるような形で2019年、昭和書体がLETSに参入する発表をした。その後しばらくはまだ良かったけど、2021年に「新LETS」が発表されたことにより料金が大幅に値上げされ、それと反比例してWebフォントや画像素材などのサービス提供も終了し、SNSでも批判の声がかなり多く上がっていた覚えがある。僕もまさか怖いくらい値上げしたうえにサービスの削減に踏み切るほど横暴なことをしてくるとは思わなかった…。さらにユーザーは新LETSへの移行に伴って何をすれば良いか、移行することによってどういったメリット・デメリットがあるかなど、移行時期真っ只中にこちらから問い合わせても充分な説明をしてもらえないままだったし、今回の昭和書体の撤退も、FWの不誠実な対応が招いたことなんじゃないか…と僕は確信している。
大変な過程を経て…だが、結果的に昭和書体と白舟書体がひとつになり生まれ変わったJ-Font.comの発表は素晴らしいと思ったし、心から祝福・称賛したいと思う。僕は子供の頃に書道(毛筆)を習っていたのもあり毛筆フォントには人一倍こだわりがあるし、昭和書体と白舟書体、両社が持っている強みを理解しているつもりだ。だからこの2つの会社がコラボするようなことがあったら最強じゃね?と心のどこかで夢見ていたのだが、両社は競合他社でもあるはずだし、それは叶わないんじゃないかとも思っていた。だからこの発表がされた瞬間、嬉しさと同時に驚きもあったんだよ。まるで書道家に目の前で書いてもらったかのような「豪快でリアルな筆致」の毛筆フォントを得意とする昭和書体と、すぐに限界が見えてきそうな毛筆の可能性をこれでもかというほど引き出し打ち破る「デザイン筆文字」を得意とする白舟書体…。両社がタッグを組むことで、片方の会社では応えきれないニーズを互いに補完し合うことができるからね。どちらもFWに振り回されてしまって大変だったと思うけど、結果的に良い形に収まったんじゃないかと僕は思っている。
J-Font.comが大いなる発展を遂げた一方、FWは自分たちに無い毛筆フォントという強みを持つ白舟書体と昭和書体、両方の会社との信頼を自らの愚行で失った。LETSのラインナップも、毛筆フォントがすっかり減って随分と寂しくなってしまったように思う…。それらを自社で新たに時間をかけて作っていくのか、また別のフォントの会社と提携するのか(信頼失墜したのに?)、どうしていくつもりなんだろうね。仮に僕が儲け至上主義の経営者の立場なら、新しいフォントを自社で作るなんてコストも手間もかかるしイヤだから、別の会社と提携することで手っ取り早く減ってしまったフォントの数やラインナップの嵩増しを図ろうと考えると思う。今のFWのように、フォント業界で高い地位を得たからと調子に乗ってユーザーからの信頼を失うような行動に及び、それまで積み重ねてきたものを失って落ちぶれた会社は過去に複数あった気がする…。昭和書体や白舟書体でなくとも、他社からも「楷書」や「行書」のような毛筆フォントは多数リリースされているし、フォントにこだわりが無い人なら他社フォントでも代替が効く、くらいに考えることもできるのかもしれない。しかし実際のところ「毛筆フォント」というジャンルは特殊なもので、ゴシックや明朝のようにコンピュータで良いものを作ろうと思っても難しいんじゃないかな。土台となる毛筆の文字をきれいに書ける人と、それをコンピュータできれいに処理できる人、双方の息が合っていないと魅力的な毛筆フォントは作れないし、ましてやそういったフォントをいくつもリリースしようと思ったらなおさら大変な話だ。FWが自社で作れないものを昭和書体や白舟書体は作って(提供して)くれていたと思うし、仲良くしていれば良かったのにと思うと、怒りを通り越して悲しさもある…。
だが結果的にJ-Font.comで昭和書体と白舟書体のコラボが果たせたわけだし、僕はこれで良かったと思う!今後の昭和書体と白舟書体、そしてJ-Font.comの動きにも期待したいし、僕もまた「フォントの独り言」で気になるフォントや話題があれば取り上げたい。そしてこれを機に、毛筆フォントに興味を持ってくれる人がもっともっと増えて欲しいと、僕は願ってやまない。
それでは、また次回の「フォントの独り言」でお会いしましょう。ィヨロシク!!
【参考にしたサイト】(いずれも2023.3.14閲覧)●J-Font.comに『昭和書体』のラインナップが合流!https://j-font.com/fudemoji/●昭和書体に関するサービス提供終了のお知らせ(FWからの告知)https://fontworks.co.jp/news/2023/03/06/13868/●フォントワークスLETSをご利用中のお客様へ(昭和書体からの告知)http://www.koueisha.ecnet.jp/lets_notice.html●【変更】「昭和書体全集」販売開始に伴う『昭和書体LETS』受付終了のお知らせ「LETSでの昭和書体提供内容に変更は無い」旨がしれっと削除されていたのでWebアーカイブを利用して【変更】前に書かれていた内容が残っていないか確認したが、残っておらず…。https://fontworks.co.jp/news/2022/08/30/14279/
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先月、デザイン性の高い毛筆フォントで定評のある白舟書体が使えるフォントサービス「J-Font.com」(ジェイフォントドットコム)で新たに昭和書体の取り扱いが始まるという告知があった。
毛筆フォントファンの僕にとってはこれほどまでに嬉しいことがあるだろうかと思うくらい感動的なニュースだ。
それに関連してフォントワークス(以下、FW)からは「昭和書体に関するサービス提供を終了」する旨の告知がなされ、それについてもいろいろと思うことがあった。
今回はそれらの事柄について、思うことを綴ってみようと思う。
まずFWでの昭和書体の提供終了についてだが、昨年8月にFWから「昭和書体LETS」が提供終了するとの告知があった。
この時点では昭和書体が全部使える同サービスの提供終了告知のみで、フォントワークスLETS(以下、LETS)に含まれる昭和書体(一部)の提供内容に変更は無い、とのことだった。
しかし先月になり、当初の告知通りであれば継続して提供されるはずだったLETSやmojimo-fudeを含むFWが提供するすべてのサービスにおいて昭和書体の取り扱いが終了する告知があり、それに合わせてしれっと昨年8月の告知内容が変更(「LETSでの提供は継続される」旨が削除)されていた。
FWいわく、昭和書体の提供終了は「株式会社昭和書体からのお申し出により」とのことだから、FWがヒドイことをしたせいで信頼関係が壊れたんじゃないかな、と思う…。
実際、過去にも2018年頃に白舟書体がLETSから撤退を発表し、それと入れ替わるような形で2019年、昭和書体がLETSに参入する発表をした。
その後しばらくはまだ良かったけど、2021年に「新LETS」が発表されたことにより料金が大幅に値上げされ、それと反比例してWebフォントや画像素材などのサービス提供も終了し、SNSでも批判の声がかなり多く上がっていた覚えがある。
僕もまさか怖いくらい値上げしたうえにサービスの削減に踏み切るほど横暴なことをしてくるとは思わなかった…。
さらにユーザーは新LETSへの移行に伴って何をすれば良いか、移行することによってどういったメリット・デメリットがあるかなど、移行時期真っ只中にこちらから問い合わせても充分な説明をしてもらえないままだったし、今回の昭和書体の撤退も、FWの不誠実な対応が招いたことなんじゃないか…と僕は確信している。
大変な過程を経て…だが、結果的に昭和書体と白舟書体がひとつになり生まれ変わったJ-Font.comの発表は素晴らしいと思ったし、心から祝福・称賛したいと思う。
僕は子供の頃に書道(毛筆)を習っていたのもあり毛筆フォントには人一倍こだわりがあるし、昭和書体と白舟書体、両社が持っている強みを理解しているつもりだ。
だからこの2つの会社がコラボするようなことがあったら最強じゃね?と心のどこかで夢見ていたのだが、両社は競合他社でもあるはずだし、それは叶わないんじゃないかとも思っていた。
だからこの発表がされた瞬間、嬉しさと同時に驚きもあったんだよ。
まるで書道家に目の前で書いてもらったかのような「豪快でリアルな筆致」の毛筆フォントを得意とする昭和書体と、すぐに限界が見えてきそうな毛筆の可能性をこれでもかというほど引き出し打ち破る「デザイン筆文字」を得意とする白舟書体…。
両社がタッグを組むことで、片方の会社では応えきれないニーズを互いに補完し合うことができるからね。
どちらもFWに振り回されてしまって大変だったと思うけど、結果的に良い形に収まったんじゃないかと僕は思っている。
J-Font.comが大いなる発展を遂げた一方、FWは自分たちに無い毛筆フォントという強みを持つ白舟書体と昭和書体、両方の会社との信頼を自らの愚行で失った。
LETSのラインナップも、毛筆フォントがすっかり減って随分と寂しくなってしまったように思う…。
それらを自社で新たに時間をかけて作っていくのか、また別のフォントの会社と提携するのか(信頼失墜したのに?)、どうしていくつもりなんだろうね。
仮に僕が儲け至上主義の経営者の立場なら、新しいフォントを自社で作るなんてコストも手間もかかるしイヤだから、別の会社と提携することで手っ取り早く減ってしまったフォントの数やラインナップの嵩増しを図ろうと考えると思う。
今のFWのように、フォント業界で高い地位を得たからと調子に乗ってユーザーからの信頼を失うような行動に及び、それまで積み重ねてきたものを失って落ちぶれた会社は過去に複数あった気がする…。
昭和書体や白舟書体でなくとも、他社からも「楷書」や「行書」のような毛筆フォントは多数リリースされているし、フォントにこだわりが無い人なら他社フォントでも代替が効く、くらいに考えることもできるのかもしれない。
しかし実際のところ「毛筆フォント」というジャンルは特殊なもので、ゴシックや明朝のようにコンピュータで良いものを作ろうと思っても難しいんじゃないかな。
土台となる毛筆の文字をきれいに書ける人と、それをコンピュータできれいに処理できる人、双方の息が合っていないと魅力的な毛筆フォントは作れないし、ましてやそういったフォントをいくつもリリースしようと思ったらなおさら大変な話だ。
FWが自社で作れないものを昭和書体や白舟書体は作って(提供して)くれていたと思うし、仲良くしていれば良かったのにと思うと、怒りを通り越して悲しさもある…。
だが結果的にJ-Font.comで昭和書体と白舟書体のコラボが果たせたわけだし、僕はこれで良かったと思う!
今後の昭和書体と白舟書体、そしてJ-Font.comの動きにも期待したいし、僕もまた「フォントの独り言」で気になるフォントや話題があれば取り上げたい。
そしてこれを機に、毛筆フォントに興味を持ってくれる人がもっともっと増えて欲しいと、僕は願ってやまない。
それでは、また次回の「フォントの独り言」でお会いしましょう。ィヨロシク!!
【参考にしたサイト】(いずれも2023.3.14閲覧)
●J-Font.comに『昭和書体』のラインナップが合流!
https://j-font.com/fudemoji/
●昭和書体に関するサービス提供終了のお知らせ(FWからの告知)
https://fontworks.co.jp/news/2023/03/06/13868/
●フォントワークスLETSをご利用中のお客様へ(昭和書体からの告知)
http://www.koueisha.ecnet.jp/lets_notice.html
●【変更】「昭和書体全集」販売開始に伴う『昭和書体LETS』受付終了のお知らせ
「LETSでの昭和書体提供内容に変更は無い」旨がしれっと削除されていたのでWebアーカイブを利用して【変更】前に書かれていた内容が残っていないか確認したが、残っておらず…。
https://fontworks.co.jp/news/2022/08/30/14279/
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