#51 まるで高度な間違い探し? メイリオの変異種 2022/03/10
10年以上前から、ダウンロード販売サイトなどでよく見るフォントがある。Windows Vista以降にシステムフォントとして標準搭載されている「メイリオ」の日本語パートを担当したデザイナーによるフォントだ。デザインに大差が無いのに発表されているフォントの数だけが異常に多く、複数のブランドからリリースされている何とも不気味なフォントだ。今回は1つに絞れないそれらのフォントを“メイリオの変異種”と勝手に呼ぶことにして、思うことを話したい。
“メイリオの変異種”にあたるフォントの存在を知るきっかけとなったのは、僕が高校生だった頃に発売された「FONT×FAN HYBRID」というフォントパッケージだ。このパッケージに「TYPE C4」のブランド名で収録されていたのが、下記画像で示したようなフォント。当時は絶対フォント感なんてあまり無かったが、そんな僕が「どのフォントも見た目一緒じゃん」と感じたのを覚えている。中にはデザインの違いがはっきり判るフォントもあるが、ほとんどのフォントは文字の曲線や直線を少しいじった程度で別フォントとして扱われているし、どれも似たり寄ったりな感じ…。このFONT×FANシリーズは今も販売されていて、2022年2月現在で最新のものは昨年7月発売の「FONT×FAN HYBRID 6」だ。同フォントパッケージは最初に発売された頃、当時販売されていた他社のフォントパッケージと比較して収録フォント数が多いことをセールスポイントにしていたようだが、このTYPE C4ブランドの代わり映えしないフォントが収録フォント数の嵩増しに使われているようにも思える。似たり寄ったりなだけで全く同じデザインでは無いものの、難易度が高めの間違い探しをするつもりで見ないと違いが判らないほどに細微な違いしか見つからないフォントばかりだし、使い分ける楽しみなんてほぼ皆無だ。これが本当にただの間違い探しで完結すれば笑い話だけど、ユーザーがわざわざ購入して成果物に利用する素材としては、あまりにも商品価値が乏しいと思う…。
さらにややこしいことに、このTYPE C4ブランドのフォントは、他にも「ユニフォント」「Fonts66」「フォントユーコム」など異なるブランド名で販売されているらしく、販売元によってフォントの名前が異なることもある。他にもNISから2017年にリリースされた「NIS_UDゴシック」も、当のNISは何も言及していないがTYPE C4ブランドで「ユニバーサルライン」の名前で販売されているフォントと同一と思われるデザインだ。違うブランド名で似たようなフォントがいくつも出ている理由やその意図は判らないが、ブランド名が違っていれば同じ(ような)デザインでも違うフォントとして発表できるし、その分だけ販売できるフォントの数(商品数)が増えることは確かだよね…。
最近はサブスク形式で多くのフォントを安価に利用できるフォントサービスが増え、ほんの10年くらい前よりもパッケージで販売されているフォントが激減した。その代わりに、本来の単体/セット販売時の価格より90%OFFとか、あるいはもっと(怖いくらい)安くダウンロードフォントが購入できるキャンペーンがよく開催されるようになった。フォントのダウンロード販売サイトをまめにチェックしていると判るが、「ビジネス文書に適したフォントを集めました」とか「動画映えするフォントが勢揃い!」とか、多種多様な謳い文句をつけて販売している。だが蓋を開けてみるとこのようなキャンペーンで売り出されるフォントにあまり良質なものは見られないし、今回取り上げた“メイリオの変異種”も、これらのキャンペーンでよく登場する常連さんだ。内情は判らないが、制作にかかるコストや手間を極限まで抑えてフォントの数を増やし、販売先を複数設けることでビジネスを成り立たせるのに“メイリオの変異種”が便利に利用されているのかな、と僕は勝手に想像している。
ただ、メイリオのようなフォントのデザイン自体は悪くないと思うし、僕もWinをメインで使っていた頃、MSフォントと違い画面上で目にしてもストレスが少なく、読みやすい作りのフォントだなと思っていた。制作に携わった人みんながコンセプトを練って骨格からデッサンして…と長い経緯を経て完成させたわけだし、成果物(でき上がったフォント)の可能性を拡げるため、そこからもっと良いフォントを作るため、あるいはもっと儲けるために派生フォントを作る(商品数を増やす)ことは正当な権利だと思っている。そういうビジネスなんだよ、という言葉に尽きると思うけど、ユーザー視点ではダウンロード販売サイトで“メイリオの変異種”に出くわす度に「またこのフォントか」という気分になるし、メイリオさえも見るのが嫌になってしまう…。デザインの差がはっきり判るフォントもあるんだから、フォントの数を絞って販売すれば良かったのに、大差が無い“変異種”を増やし過ぎたせいでOS標準フォントの方がマシだと思えるくらいチープなイメージと、ビジネスだからと消費者を軽く見ている内部の人たちの嫌なニオイがフォントにまで染みついているように思えるし、残念だ。
それでは、また次回の「フォントの独り言」でお会いしましょう。ィヨロシク!!
【参考にしたサイト】(いずれも2022.2.10閲覧)●NIS_UDゴシックシリーズ - NIS Fontの魅力https://www.nisfont.co.jp/about/series_ud.html●基本デザインコンセプト - TYPE C4https://www.type-c4.com/concept/●FONT×FAN HYBRID https://www.fontalliance.com/product/ffh/●FONT×FAN HYBRID 6https://www.fontalliance.com/product/ffh6/●デザインポケットhttps://designpocket.jp/dp_top.aspx●Font Factoryhttps://www.fontfactory.jp/●【新書体リリース】NIS_UDゴシックシリーズ - NIS Fontのブログhttps://www.nisfont.co.jp/blog/2017_12_06/
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10年以上前から、ダウンロード販売サイトなどでよく見るフォントがある。
Windows Vista以降にシステムフォントとして標準搭載されている「メイリオ」の日本語パートを担当したデザイナーによるフォントだ。
デザインに大差が無いのに発表されているフォントの数だけが異常に多く、複数のブランドからリリースされている何とも不気味なフォントだ。
今回は1つに絞れないそれらのフォントを“メイリオの変異種”と勝手に呼ぶことにして、思うことを話したい。
“メイリオの変異種”にあたるフォントの存在を知るきっかけとなったのは、僕が高校生だった頃に発売された「FONT×FAN HYBRID」というフォントパッケージだ。
このパッケージに「TYPE C4」のブランド名で収録されていたのが、下記画像で示したようなフォント。
当時は絶対フォント感なんてあまり無かったが、そんな僕が「どのフォントも見た目一緒じゃん」と感じたのを覚えている。
中にはデザインの違いがはっきり判るフォントもあるが、ほとんどのフォントは文字の曲線や直線を少しいじった程度で別フォントとして扱われているし、どれも似たり寄ったりな感じ…。
このFONT×FANシリーズは今も販売されていて、2022年2月現在で最新のものは昨年7月発売の「FONT×FAN HYBRID 6」だ。
同フォントパッケージは最初に発売された頃、当時販売されていた他社のフォントパッケージと比較して収録フォント数が多いことをセールスポイントにしていたようだが、このTYPE C4ブランドの代わり映えしないフォントが収録フォント数の嵩増しに使われているようにも思える。
似たり寄ったりなだけで全く同じデザインでは無いものの、難易度が高めの間違い探しをするつもりで見ないと違いが判らないほどに細微な違いしか見つからないフォントばかりだし、使い分ける楽しみなんてほぼ皆無だ。
これが本当にただの間違い探しで完結すれば笑い話だけど、ユーザーがわざわざ購入して成果物に利用する素材としては、あまりにも商品価値が乏しいと思う…。
さらにややこしいことに、このTYPE C4ブランドのフォントは、他にも「ユニフォント」「Fonts66」「フォントユーコム」など異なるブランド名で販売されているらしく、販売元によってフォントの名前が異なることもある。
他にもNISから2017年にリリースされた「NIS_UDゴシック」も、当のNISは何も言及していないがTYPE C4ブランドで「ユニバーサルライン」の名前で販売されているフォントと同一と思われるデザインだ。
違うブランド名で似たようなフォントがいくつも出ている理由やその意図は判らないが、ブランド名が違っていれば同じ(ような)デザインでも違うフォントとして発表できるし、その分だけ販売できるフォントの数(商品数)が増えることは確かだよね…。
最近はサブスク形式で多くのフォントを安価に利用できるフォントサービスが増え、ほんの10年くらい前よりもパッケージで販売されているフォントが激減した。
その代わりに、本来の単体/セット販売時の価格より90%OFFとか、あるいはもっと(怖いくらい)安くダウンロードフォントが購入できるキャンペーンがよく開催されるようになった。
フォントのダウンロード販売サイトをまめにチェックしていると判るが、「ビジネス文書に適したフォントを集めました」とか「動画映えするフォントが勢揃い!」とか、多種多様な謳い文句をつけて販売している。
だが蓋を開けてみるとこのようなキャンペーンで売り出されるフォントにあまり良質なものは見られないし、今回取り上げた“メイリオの変異種”も、これらのキャンペーンでよく登場する常連さんだ。
内情は判らないが、制作にかかるコストや手間を極限まで抑えてフォントの数を増やし、販売先を複数設けることでビジネスを成り立たせるのに“メイリオの変異種”が便利に利用されているのかな、と僕は勝手に想像している。
ただ、メイリオのようなフォントのデザイン自体は悪くないと思うし、僕もWinをメインで使っていた頃、MSフォントと違い画面上で目にしてもストレスが少なく、読みやすい作りのフォントだなと思っていた。
制作に携わった人みんながコンセプトを練って骨格からデッサンして…と長い経緯を経て完成させたわけだし、成果物(でき上がったフォント)の可能性を拡げるため、そこからもっと良いフォントを作るため、あるいはもっと儲けるために派生フォントを作る(商品数を増やす)ことは正当な権利だと思っている。
そういうビジネスなんだよ、という言葉に尽きると思うけど、ユーザー視点ではダウンロード販売サイトで“メイリオの変異種”に出くわす度に「またこのフォントか」という気分になるし、メイリオさえも見るのが嫌になってしまう…。
デザインの差がはっきり判るフォントもあるんだから、フォントの数を絞って販売すれば良かったのに、大差が無い“変異種”を増やし過ぎたせいでOS標準フォントの方がマシだと思えるくらいチープなイメージと、ビジネスだからと消費者を軽く見ている内部の人たちの嫌なニオイがフォントにまで染みついているように思えるし、残念だ。
それでは、また次回の「フォントの独り言」でお会いしましょう。ィヨロシク!!
【参考にしたサイト】(いずれも2022.2.10閲覧)
●NIS_UDゴシックシリーズ - NIS Fontの魅力
https://www.nisfont.co.jp/about/series_ud.html
●基本デザインコンセプト - TYPE C4
https://www.type-c4.com/concept/
●FONT×FAN HYBRID
https://www.fontalliance.com/product/ffh/
●FONT×FAN HYBRID 6
https://www.fontalliance.com/product/ffh6/
●デザインポケット
https://designpocket.jp/dp_top.aspx
●Font Factory
https://www.fontfactory.jp/
●【新書体リリース】NIS_UDゴシックシリーズ - NIS Fontのブログ
https://www.nisfont.co.jp/blog/2017_12_06/
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