#49 ロゴ向きだけどロゴ向きじゃないフォント 2022/01/10
視覚デザイン研究所(以下、VDL)が販売しているフォント「ロゴG」。文字通り、ただ文字を並べただけでロゴタイプが作れそうなカッコイイデザインで、同社がリリースしているフォントの中で一番魅力的といっても良いフォントだ。1990年代後半からパッケージ販売されていて、20年以上が経過した今でも使用例が見られる。現在はAdobe Fontsにも細めの1ウェイトが含まれており、Adobe CCのサブスクリプションを契約している人であれば利用できる。2022年最初となる今回は、そんな「ロゴG」に関する話をしようと思う。
まずロゴGとは、こんなフォント↓フォントの名前からも連想できるように、ただ文字を並べただけでそのままロゴとして使えそうなデザインだ。文字が正方形の枠の中に大きくデザインされていて、縦組みでも横組みでもきれいに見える。目を引くデザインができる自信が無い人でも、とりあえずこのフォントで文字を並べてみれば、何となくカッコいいデザインができた気になる(笑)。プロのデザイナーでもそんな気分になってしまうからか、このロゴGの使用例は印刷物や映像媒体などでたくさん見られるものの、ミスマッチな使用例もかなり多くあるように感じている。もうちょっと知的に、淡々と伝えたほうが良いんじゃないかと思う注意喚起の広告や貼り紙、立て看板などの目立つ部分ででかでかとロゴGが使われていたり。カジュアルな場面では楽しく使えるフォントだが、フォーマルな場面には適さないし、ゴシック体や明朝体で堅実な文字組みをするのが好きな人には、あまり好まれないフォントかも…。適当に文字を並べただけでも映えるよう丁寧にデザインされている一方、使い手のセンスの良し悪しが顕著に現れやすいフォントだなとも思う。
ただ、そんな「ロゴG」を使う際に困ることがあるとすれば、フォントの使用条件(ライセンス)だ。フォントの名前が「ロゴG」で、デザインも名前負けしておらずロゴにピッタリだからロゴでも使えるのかな?と思いきや、なんとロゴタイプで用いる場合は追加使用料が発生するという。VDL公式サイトの「ライセンス」のページを見ると、「社名、屋号、団体名、商品名、雑誌名、小説や漫画・映画・アニメ・ゲーム等の著作物のタイトル名、商標(登録・未登録に関わらない。サービスやキャラクター等を言語化した名称も含まれる)等への使用に対し、ライセンス処理を行います」とある。使用する文字の総数に応じて、料金を算出して徴収する仕組みのようだ。しかしVDL側がどこまでを「ロゴタイプ」とみなしているのかの線引きが曖昧でユーザーにはかなり判りづらいように思うし、不親切だよね…。VDLは「ロゴG」を、「『文字組するだけで、ロゴタイプ』をコンセプトに制作したデザインゴシック体」と紹介しているのに、これではユーザーが安心して使えないじゃないか…。あくまでもデザインのコンセプトだから、購入したらロゴタイプで使っても良いよ、と言及しているわけでは決して無いものの、ロゴタイプに最適なフォントだと謳って販売しているのだから、フォントを購入すれば追加使用料など払わずともロゴタイプに使用できると誤解してしまうユーザーも出てくることだろう。特にフォントを商用利用したい場合、ユーザーは使用条件を予めよく確認しておくこと、フォントベンダーはその使用条件をできる限り判りやすく誤解が生じないように明示しておくことがお互いに大事なはず…。だけどVDLのやり方だと、仮に「ロゴG」を購入したユーザーが使用条件を確認せずに「ロゴに最適なフォントと書いてあるからロゴで使っても問題ないんだ」と判断してしまっても仕方がないんじゃないかなと思ってしまう。著作物やクリエイターの権利を守るため、というと聞こえは良いけど、単に儲けを意識し過ぎているが故だろうね。
どういうフォントであれ、購入・使用する前に使用条件を確認するのは当然のことなのに、まともに目を通さない人がフォントを仕事で日常的に扱っているプロの人でも多くいるのが実情だ。契約書にサインする前に書かれている内容をよく確認しておこうね、しっかり読んでもまったく読まなくてもサインした以上読んだとみなされるからね、と一般的に言われるのと同じだよね。だからフォントベンダーは、使用条件に関して文字だけで長々と書かずに、細かい内容を読もうとしない人でも判りやすいようにフローチャートを用意するなどいろいろと試行錯誤している。使用条件をちゃんと確認して、フェアな精神で使ってくれるユーザーもいるわけだからね。だけど今回紹介した「ロゴG」は、むしろフォントを提供しているVDL側のほうが不誠実で、ロゴタイプで扱いやすいフォントですよと銘打っているのにもかかわらず、提示している使用条件を読む限り、ロゴタイプで使わせる気は本当のところ無いんじゃないかと感じる…。ユーザーの大半はフォントのクオリティだけじゃなく、コストパフォーマンスの良さと判りやすい使用条件、安定して使い続けられるようなサポート体制が整っているかなど、いろんなことを勘案した上で使うフォントを決めているはずだからね。ロゴに適したデザインだから「ロゴG」という名前がつけられているのに、使用条件のせいでロゴタイプとしては扱いにくいフォントになってしまっている…。いろいろ面倒なことを言ったけど、最もフォントが活躍できるであろう場面で活躍しにくくなっている「ロゴG」が、何だかかわいそうだな…。そんな思いを巡らせながら、今回この記事を執筆しました…。
それは、また次回の「フォントの独り言」でお会いしましょう。2022年も、ィヨロシク!!
【参考にしたサイト】(いずれも2021.12.18閲覧)●VDL ロゴG R|Adobe Fonts↓今回紹介したフォントで試し打ちができます。https://fonts.adobe.com/fonts/vdl-logog●書体見本 – ロゴG|視覚デザイン研究所「『文字組するだけで、ロゴタイプ』をコンセプトに制作したデザインゴシック体です」https://www.vdl.co.jp/font/logog.html●ライセンス – ロゴタイプ|視覚デザイン研究所https://www.vdl.co.jp/license/form.php?logo●株式会社 視覚デザイン研究所|和文フォント大図鑑https://www.akibatec.net/wabunfont/library/vdl/vdl.html
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視覚デザイン研究所(以下、VDL)が販売しているフォント「ロゴG」。
文字通り、ただ文字を並べただけでロゴタイプが作れそうなカッコイイデザインで、同社がリリースしているフォントの中で一番魅力的といっても良いフォントだ。
1990年代後半からパッケージ販売されていて、20年以上が経過した今でも使用例が見られる。
現在はAdobe Fontsにも細めの1ウェイトが含まれており、Adobe CCのサブスクリプションを契約している人であれば利用できる。
2022年最初となる今回は、そんな「ロゴG」に関する話をしようと思う。
まずロゴGとは、こんなフォント↓
フォントの名前からも連想できるように、ただ文字を並べただけでそのままロゴとして使えそうなデザインだ。
文字が正方形の枠の中に大きくデザインされていて、縦組みでも横組みでもきれいに見える。
目を引くデザインができる自信が無い人でも、とりあえずこのフォントで文字を並べてみれば、何となくカッコいいデザインができた気になる(笑)。
プロのデザイナーでもそんな気分になってしまうからか、このロゴGの使用例は印刷物や映像媒体などでたくさん見られるものの、ミスマッチな使用例もかなり多くあるように感じている。
もうちょっと知的に、淡々と伝えたほうが良いんじゃないかと思う注意喚起の広告や貼り紙、立て看板などの目立つ部分ででかでかとロゴGが使われていたり。
カジュアルな場面では楽しく使えるフォントだが、フォーマルな場面には適さないし、ゴシック体や明朝体で堅実な文字組みをするのが好きな人には、あまり好まれないフォントかも…。
適当に文字を並べただけでも映えるよう丁寧にデザインされている一方、使い手のセンスの良し悪しが顕著に現れやすいフォントだなとも思う。
ただ、そんな「ロゴG」を使う際に困ることがあるとすれば、フォントの使用条件(ライセンス)だ。
フォントの名前が「ロゴG」で、デザインも名前負けしておらずロゴにピッタリだからロゴでも使えるのかな?と思いきや、なんとロゴタイプで用いる場合は追加使用料が発生するという。
VDL公式サイトの「ライセンス」のページを見ると、「社名、屋号、団体名、商品名、雑誌名、小説や漫画・映画・アニメ・ゲーム等の著作物のタイトル名、商標(登録・未登録に関わらない。サービスやキャラクター等を言語化した名称も含まれる)等への使用に対し、ライセンス処理を行います」とある。
使用する文字の総数に応じて、料金を算出して徴収する仕組みのようだ。
しかしVDL側がどこまでを「ロゴタイプ」とみなしているのかの線引きが曖昧でユーザーにはかなり判りづらいように思うし、不親切だよね…。
VDLは「ロゴG」を、「『文字組するだけで、ロゴタイプ』をコンセプトに制作したデザインゴシック体」と紹介しているのに、これではユーザーが安心して使えないじゃないか…。
あくまでもデザインのコンセプトだから、購入したらロゴタイプで使っても良いよ、と言及しているわけでは決して無いものの、ロゴタイプに最適なフォントだと謳って販売しているのだから、フォントを購入すれば追加使用料など払わずともロゴタイプに使用できると誤解してしまうユーザーも出てくることだろう。
特にフォントを商用利用したい場合、ユーザーは使用条件を予めよく確認しておくこと、フォントベンダーはその使用条件をできる限り判りやすく誤解が生じないように明示しておくことがお互いに大事なはず…。
だけどVDLのやり方だと、仮に「ロゴG」を購入したユーザーが使用条件を確認せずに「ロゴに最適なフォントと書いてあるからロゴで使っても問題ないんだ」と判断してしまっても仕方がないんじゃないかなと思ってしまう。
著作物やクリエイターの権利を守るため、というと聞こえは良いけど、単に儲けを意識し過ぎているが故だろうね。
どういうフォントであれ、購入・使用する前に使用条件を確認するのは当然のことなのに、まともに目を通さない人がフォントを仕事で日常的に扱っているプロの人でも多くいるのが実情だ。
契約書にサインする前に書かれている内容をよく確認しておこうね、しっかり読んでもまったく読まなくてもサインした以上読んだとみなされるからね、と一般的に言われるのと同じだよね。
だからフォントベンダーは、使用条件に関して文字だけで長々と書かずに、細かい内容を読もうとしない人でも判りやすいようにフローチャートを用意するなどいろいろと試行錯誤している。
使用条件をちゃんと確認して、フェアな精神で使ってくれるユーザーもいるわけだからね。
だけど今回紹介した「ロゴG」は、むしろフォントを提供しているVDL側のほうが不誠実で、ロゴタイプで扱いやすいフォントですよと銘打っているのにもかかわらず、提示している使用条件を読む限り、ロゴタイプで使わせる気は本当のところ無いんじゃないかと感じる…。
ユーザーの大半はフォントのクオリティだけじゃなく、コストパフォーマンスの良さと判りやすい使用条件、安定して使い続けられるようなサポート体制が整っているかなど、いろんなことを勘案した上で使うフォントを決めているはずだからね。
ロゴに適したデザインだから「ロゴG」という名前がつけられているのに、使用条件のせいでロゴタイプとしては扱いにくいフォントになってしまっている…。
いろいろ面倒なことを言ったけど、最もフォントが活躍できるであろう場面で活躍しにくくなっている「ロゴG」が、何だかかわいそうだな…。
そんな思いを巡らせながら、今回この記事を執筆しました…。
それは、また次回の「フォントの独り言」でお会いしましょう。
2022年も、ィヨロシク!!
【参考にしたサイト】(いずれも2021.12.18閲覧)
●VDL ロゴG R|Adobe Fonts
↓今回紹介したフォントで試し打ちができます。
https://fonts.adobe.com/fonts/vdl-logog
●書体見本 – ロゴG|視覚デザイン研究所
「『文字組するだけで、ロゴタイプ』をコンセプトに制作したデザインゴシック体です」
https://www.vdl.co.jp/font/logog.html
●ライセンス – ロゴタイプ|視覚デザイン研究所
https://www.vdl.co.jp/license/form.php?logo
●株式会社 視覚デザイン研究所|和文フォント大図鑑
https://www.akibatec.net/wabunfont/library/vdl/vdl.html
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