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#48 手作業が生んだ最強髭文字「大髭」
2021/12/10(Fri)
白舟書体が制作した毛筆フォント「大髭(おおひげ)」。
同社が制作・販売しているフォントの中でもかなり人気のフォントなんじゃないだろうか。
フォントにあまり詳しくなくても、どこかで使用例を見た記憶がある人もいるかもしれない。
2021年最後となる今回は、そんな「大髭」というフォントの話をしようと思う。

まず「大髭」とは、こんなフォント↓
Ohige.jpg
髭加工のみが施された「大髭113」に加え、虫喰い加工によってより毛筆ならではの勢いや力強さが目立つ「大髭115」の2種類のバリエーションがある。
髭加工も虫喰い加工も程良く施されており、文字の骨格もバランスよく、癖も感じさせないくらいにシッカリしているので、デザインフォントでありながら視認性と可読性の両方に優れている。

白舟書体のサイトを見ると、「コンピュータでデザインして仕上げた髭文字ではなく字母を手書きし、さらにその上から昔ながらの方法で髭や虫喰を手書きした、アナログ感溢れる髭文字です」と紹介されている。
確かに他のいろんなデジタルフォントと比較しても、ああ、ちゃんと人の手によってデザインされたんだな、と誰でも明確に判るくらいにアナログ感に溢れている。
実際、この大髭は原字に「1文字1文字修正液や油性ペンを使って手作業でハネや髭を加えて」制作されたとインタビュー記事にもある。
どんなに迷いの無い繊細な曲線を描けるデザイナーでも、コンピュータ上でこのフォントのデザインを完結させることはかなり難しいだろうと思う。
だがこの「大髭」は、「アナログ感溢れる髭文字」であることに加えて、コンピュータ上で拡大しても、あるいはそこから印刷しても粗が出ないし、プロからアマチュアまでどんなユーザーにも使いやすいように、アナログのメリットとコンピュータのメリットを上手く賢く利用して作り上げられているように思う。
通常は毛筆を用いて書くことが無い英字も、日本語の文字に負けない強さで、日本語の文字と混在させても違和感の無いデザインに仕上げられているのもすごい。

文字が全体的に右上がりにデザインされているので、横に組んでも縦に組んでもメッセージに勢いが感じられる。
フォントとして扱いやすいように、堅実に、頑固に、緊張感のあるデザインに仕上げられているのに、のびのびと柔軟性と躍動感がある感じ。
他社の髭文字や江戸文字、勘亭流などの系統のフォントは、堅実に、頑固に、緊張感のあるデザインに仕上がっているものもたくさんあるものの、柔軟性や躍動感が欠けているものが多く、大胆なデザインではあるのに文字を並べてみてもあまり面白みが無く感じられることもある。
僕は先に「大髭」を便宜上「毛筆のデザインフォント」といったが、髭文字でも江戸文字でも勘亭流でもなければどのジャンルのいずれにも属さない唯一無二のフォントといっても良いと思う。
また、これはフォントに限った話じゃなく世の中のどんな製品にも共通していることだと思うが、ある製品に人気が出れば他社(他者)はそれをどうにか非難されないよう、細かい部分を上手く変えるなど知恵をはたらかせて模倣した製品を販売しようと考える。
ある会社のフォントに人気が出れば、他社がそれに影響されて似たようなフォントを作り始めるし、「影響」されただけならまだしも単なる「模倣」なんじゃないかと思うフォントも存在する。
だが「大髭」だけは、このフォントのデザインに何となく似せたフォントを作りたくてもまず「何となく似せる」(模倣する)ことすらも難しいんじゃないかと思う。
日本古来の伝統工芸品など、人間業と思えない程の素晴らしいものづくりができる職人さんが日本にたった1人や数人しかおらず、そんな人たちがご高齢だけど後継者にふさわしい人がいないから自分の代で終えると決めている、なんて話を聞いたことがあるが、「大髭」もそんな職人さんの手によって作られたんだろうと思えるくらいの職人芸だ。
実際は、このフォント1つの完成に1人でなくいろんな人が携わっているんだろうけど、制作に関わるすべての人が自社フォントに自信を持って息を合わせないと、成果品のクオリティに関係無く複数人で1つのフォントを完成させること自体がまずできないからね。
今まで人手が必要だった仕事の一部または全部をAIが担えるようになり、そういった仕事に従事している人たちの仕事が次第に失われていく、なんていわれている現代だが、フォントに限らず「デザイン」や「創作」の分野すべてが、あるいはクリエイティブにまったく関係無い仕事でも、人間の手無くしては絶対に成り立たないし、人間でないと人間の心は動かせない…。
多少極端に聞こえるかもしれないが、本当にそこまでのことを考えさせてくれるくらいに「大髭」の完成度は目をみはるものがあるし、作り手も自信と誇りを持ってユーザーに提供しているのだろうと思う。

ちなみに、白舟書体が9月頃に発表した情報によれば、中国のフォントベンダーである方正との協力により白舟書体のフォントの簡体字版が完成したそうだ。
その第1弾には「大髭」も含まれていて、J-Font.comの追加オプションサービスとして2022年にリリース予定とのこと。
今年夏に僕が「フォントの独り言」で取り上げた「白舟楷書」もそうだが、今でも充分人気のあるフォントをさらに良いものになるよう展開していく挑戦心には感服する。
今後の白舟書体の新しい展開・発表にも、引き続き期待したいところだ。

それでは、また次回の「フォントの独り言」でお会いしましょう。
皆さん、良いお年をお迎えください。ィヨロシク!!

【参考にしたサイト】(いずれも2021.11.24閲覧)
●J-Font.com
白舟書体とシヤチハタが共同で運営するフォントサービス。サブスク形式で白舟書体の多くが利用可能。
https://j-font.com/
●大髭113|FONTPLUS
今回紹介した「大髭」で試し打ちができます(大髭115に切り替えも可)。
https://fontplus.jp/font-list/ohhige113
●探訪!株式会社白舟書体、シヤチハタ株式会社|Too(インタビュー記事)
「大髭」を含む白舟書体のアナログな制作方法に関する言及アリ。
https://global.too.com/dsurf-online/interview/000918.html
●デザイン筆文字シリーズ Vol.12「大髭(おおひげ)」|白舟書体
※このパッケージ製品は第一水準漢字のみ対応のTrueTypeフォント。第二水準に対応したOpenTypeフォントはJ-Font.comのサブスクにて利用可能。
https://www.hakusyu.com/font/d12.htm
●白舟書体の中国語対応オプションライセンスに関するご案内|J-Font.com
https://j-font.com/news/detail.php?post_id=8338
●方正×白舟の簡体字フォントが完成!|白舟書体
https://www.hakusyu.com/schinese.htm
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