#45 使いやすさの象徴? 角ゴシック体Ca 2021/09/10
キヤノンが制作し、販売していた「角ゴシック体Ca」というフォント。2007年1月31日まで同社が販売していたフォントパック「FontGallery」に収録されていた。現代のようにフォントのサブスクリプションが主流ではなかった頃、1万円台で販売されていたフォントパックの中では高品質で使いやすい角ゴシック体フォントだったと思う。今回は、そんな「角ゴシック体Ca」についての話をしたい。
まず「角ゴシック体Ca」とは、こんなフォント↓文字の懐が広く、大きくデザインされているので、高度な文字組みができるアプリや技術を持っていない人が組んでもきれいに見えるようにデザインされている。また、文字を並べてみると欧文も和文も、すべての文字の天地がきれいに揃うので、可読性・視認性共に高い。他のゴシック体と比べても面白みも色気も無く堅い印象だが、そのおかげでどんなメッセージでも中立的に、淡々と伝えてくれる。冷静に、知的に、事務的に事実を伝えたい場面には大変適しているフォントだ。実際、報道番組などでは標準のテロップ用フォントとして採用されている例もあるからね。サブスクリプション形式のフォントが今ほど主流じゃなかった2000年代までは、特にテレビテロップのような映像系での採用例が非常によく見られた。安価なパッケージフォントがたくさん販売されていた当時は、印刷物ならOKでも映像媒体で使う場合は別途契約を締結して、追加使用料を支払わないといけなくなるフォントも多くあった。契約の手続きが面倒だとか使用料が高いとか以前に、使用条件自体が煩雑で、書面や公式サイトなどを確認しても判りづらいフォントも多かった。その中で角ゴシック体Caを含むキヤノン製フォントは、他のフォントの会社と比べると使用条件が判りやすく、映像でも別途契約を結ばずとも使用OKだったので、映像系の仕事をしている人たちにとっては扱いやすかったはずだ。実際に、2000年代半ば頃までは報道番組からバラエティ番組まで、ありとあらゆるところで「角ゴシック体Ca」を含むキヤノン製フォントの使用例が見られた。
ただ、ウェイト(太さ)が4つしかなく、一番太い「U」でも他社が販売しているゴシック体と比べると細めだ。おそらくこの「角ゴシック体Ca」開発時には、事務的な文書を作成するくらいの用途しか想定していなかったのかもしれない。それでも安価で使いやすいからと、2020年代の今でもピーク時と比べると他社の同系統の角ゴシック体への置き換えが進み使用例はかなり減ったが、それでも、特に映像系ではまだまだ好んで使っているところもあるようだ。ただ、FontGalleryの「著作権について」のFAQを確認すると、2007年に販売終了して以後も継続利用が認められているものの、「追加ライセンスを発行することはできない」旨の記述がある。つまり、「角ゴシック体Ca」を他のPCでも使いたいからと、使用するPCの台数分の使用料金を支払おうと思っても、キヤノン側が受け付けていないから無理ということになる…。加えて、もうサポート終了して15年近くが経過しているので、今後PCのOSのバージョンアップやユーザーが使うアプリなど、環境の変化によりフォントが使えなくなれば、諦めて他社フォントを使うしかない。FontGalleryというフォントパック自体の価格が安価だったうえに、使用条件も緩く設定されていたので、ユーザーにとってはとても使いやすく今でも使い続けられているくらいだが、当のキヤノン側にはあまり儲けがなかったから販売終了を決めたのかもしれない…。とはいえ販売終了後に追加ライセンスの発行ができないとなれば、不正コピーによるフォントの利用が増えそうな気もするけどね…。
ぜひとも機会があれば、「角ゴシック体Ca」やFontGalleryに収録されていた一部のフォントだけでも再販して欲しいと思うな。デザインのリニューアルなどは要らないので、せめてWinやMacの最新バージョンに正式に対応させたうえで、また新しい形で「角ゴシック体Ca」の姿が拝める日が来れば…なんて密かに期待している。2021年現在も販売されていて、ダウンロード購入やサブスクリプション形式での利用が可能なフォントでも、デザイン面やコスト面に問題があるためか使いにくく、ほとんど使用例が見られないフォントもたくさんある。その点「角ゴシック体Ca」は、入手が困難になった現在でも、ピーク時に比べて使用例は減ったものの現在でも使われ続けている。使いやすいフォントはたとえ目立たない場所であっても長く使われ続けるという事実、それを象徴するフォントの1つとして「角ゴシック体Ca」を挙げても良いと僕は思う。
それでは、また来月の「フォントの独り言」でお会いしましょう。ィヨロシク!!
【参考にしたサイト】(いずれも2021.8.12閲覧)●和文フォント大図鑑http://akibatec.net/wabunfont/library/canon/canon.html●【FontGallery】著作権についてhttps://faq.canon.jp/app/answers/detail/a_id/30243●【FontGallery】FontGallery TrueType DeluxeCD Super II 仕様https://faq.canon.jp/app/answers/detail/a_id/29883
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キヤノンが制作し、販売していた「角ゴシック体Ca」というフォント。
2007年1月31日まで同社が販売していたフォントパック「FontGallery」に収録されていた。
現代のようにフォントのサブスクリプションが主流ではなかった頃、1万円台で販売されていたフォントパックの中では高品質で使いやすい角ゴシック体フォントだったと思う。
今回は、そんな「角ゴシック体Ca」についての話をしたい。
まず「角ゴシック体Ca」とは、こんなフォント↓
文字の懐が広く、大きくデザインされているので、高度な文字組みができるアプリや技術を持っていない人が組んでもきれいに見えるようにデザインされている。
また、文字を並べてみると欧文も和文も、すべての文字の天地がきれいに揃うので、可読性・視認性共に高い。
他のゴシック体と比べても面白みも色気も無く堅い印象だが、そのおかげでどんなメッセージでも中立的に、淡々と伝えてくれる。
冷静に、知的に、事務的に事実を伝えたい場面には大変適しているフォントだ。
実際、報道番組などでは標準のテロップ用フォントとして採用されている例もあるからね。
サブスクリプション形式のフォントが今ほど主流じゃなかった2000年代までは、特にテレビテロップのような映像系での採用例が非常によく見られた。
安価なパッケージフォントがたくさん販売されていた当時は、印刷物ならOKでも映像媒体で使う場合は別途契約を締結して、追加使用料を支払わないといけなくなるフォントも多くあった。
契約の手続きが面倒だとか使用料が高いとか以前に、使用条件自体が煩雑で、書面や公式サイトなどを確認しても判りづらいフォントも多かった。
その中で角ゴシック体Caを含むキヤノン製フォントは、他のフォントの会社と比べると使用条件が判りやすく、映像でも別途契約を結ばずとも使用OKだったので、映像系の仕事をしている人たちにとっては扱いやすかったはずだ。
実際に、2000年代半ば頃までは報道番組からバラエティ番組まで、ありとあらゆるところで「角ゴシック体Ca」を含むキヤノン製フォントの使用例が見られた。
ただ、ウェイト(太さ)が4つしかなく、一番太い「U」でも他社が販売しているゴシック体と比べると細めだ。
おそらくこの「角ゴシック体Ca」開発時には、事務的な文書を作成するくらいの用途しか想定していなかったのかもしれない。
それでも安価で使いやすいからと、2020年代の今でもピーク時と比べると他社の同系統の角ゴシック体への置き換えが進み使用例はかなり減ったが、それでも、特に映像系ではまだまだ好んで使っているところもあるようだ。
ただ、FontGalleryの「著作権について」のFAQを確認すると、2007年に販売終了して以後も継続利用が認められているものの、「追加ライセンスを発行することはできない」旨の記述がある。
つまり、「角ゴシック体Ca」を他のPCでも使いたいからと、使用するPCの台数分の使用料金を支払おうと思っても、キヤノン側が受け付けていないから無理ということになる…。
加えて、もうサポート終了して15年近くが経過しているので、今後PCのOSのバージョンアップやユーザーが使うアプリなど、環境の変化によりフォントが使えなくなれば、諦めて他社フォントを使うしかない。
FontGalleryというフォントパック自体の価格が安価だったうえに、使用条件も緩く設定されていたので、ユーザーにとってはとても使いやすく今でも使い続けられているくらいだが、当のキヤノン側にはあまり儲けがなかったから販売終了を決めたのかもしれない…。
とはいえ販売終了後に追加ライセンスの発行ができないとなれば、不正コピーによるフォントの利用が増えそうな気もするけどね…。
ぜひとも機会があれば、「角ゴシック体Ca」やFontGalleryに収録されていた一部のフォントだけでも再販して欲しいと思うな。
デザインのリニューアルなどは要らないので、せめてWinやMacの最新バージョンに正式に対応させたうえで、また新しい形で「角ゴシック体Ca」の姿が拝める日が来れば…なんて密かに期待している。
2021年現在も販売されていて、ダウンロード購入やサブスクリプション形式での利用が可能なフォントでも、デザイン面やコスト面に問題があるためか使いにくく、ほとんど使用例が見られないフォントもたくさんある。
その点「角ゴシック体Ca」は、入手が困難になった現在でも、ピーク時に比べて使用例は減ったものの現在でも使われ続けている。
使いやすいフォントはたとえ目立たない場所であっても長く使われ続けるという事実、それを象徴するフォントの1つとして「角ゴシック体Ca」を挙げても良いと僕は思う。
それでは、また来月の「フォントの独り言」でお会いしましょう。ィヨロシク!!
【参考にしたサイト】(いずれも2021.8.12閲覧)
●和文フォント大図鑑
http://akibatec.net/wabunfont/library/canon/canon.html
●【FontGallery】著作権について
https://faq.canon.jp/app/answers/detail/a_id/30243
●【FontGallery】FontGallery TrueType DeluxeCD Super II 仕様
https://faq.canon.jp/app/answers/detail/a_id/29883
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