#44 愛され続ける異端児 丸明オールド 2021/08/10
砧書体制作所(旧カタオカデザインワークス)が2001年にリリースした「丸明オールド」。一般的な明朝体よりも、文字を組み立てるパーツ(エレメント)に「丸」や「曲線」が多用されている、不思議な印象のフォント。かつては高価なフォントだったが、今年の春にAdobe Creative Cloudのサブスクリプション契約者が利用できるAdobe Fontsのラインナップに追加され、気軽に利用できるようになった。今回は、そんな「丸明オールド」の話をしようと思う。
まず丸明オールドとは、こんなフォント↓かな文字は達筆な人が書いたような、手書きの印象をも持ち合わせている。そんなかな文字と比べると漢字には一見大きな特徴がないように思えるが、エレメント(文字を組み立てるパーツ)の端が丸ゴシックのように丸く、他にもあらゆるところに「丸」が取り入れられている。また漢字の横線は程々に太いので、文字のサイズが小さめでも無理なく読むことができる。他の明朝体よりリズミカルに見えるし、「古さ」とか「懐かしさ」は感じられるのに決して「古臭い」印象は無い感じ。かな文字のデザインを遊ばせ過ぎているせいで、勢いで何度か使ったらそのフォントの可能性を追求する前に使う側が飽きてしまいそうなデザインの明朝体もある中で、丸明オールドは遊び心がありながらも「下品」だとか「ダサい」印象がまったく見受けられず、なぜか「飽きない」のだ。
この丸明オールドで好きな言葉やメッセージを並べてみるとわかるのだが、他の明朝体で全く同じ文字を並べるよりも、伝わる情報量が多く、言葉がより深く、重く感じられる。伝えたいメッセージをとりあえず目立たせたい、とりあえず読んでもらいたいという気持ちから「目立たせよう」と考えると、つい文字を大きくしたり太いウェイトのフォントを使ったり、あるいは単に奇抜なデザインのフォントを選んだりしてしまいがちだ。しかし丸明オールドは細めのウェイトなのに、書き手が伝えたいメッセージを読み手に率直に伝えるだけでなく、読み手にそのメッセージの裏側に隠された深い意味まで考えさせるチカラを持っている。打ち込むメッセージ関係なく、「丸明オールド」というフォント単体のデザインのイメージを言葉であらわすなら「古い」「温かい」「懐かしい」辺りだと思うが、打ち込むメッセージによって、そのメッセージに合わせて表情を変えてくれるのだ。だから僕はキャッチコピーなどに丸明オールドが使用された広告などを見ると、必ずと言って良いほど立ち止まってしまう。それは単にフォントのデザインが好きだからってだけじゃなく、「読みたい」と思わせてくれるチカラを丸明オールドが持っている、そんな感覚からだ。同じメッセージでも、フォントを適切に使い分けることで人の気持ちが揺れ動かされるのは確かだが、丸明オールドは特に「人の心に直接語りかける」、そんな能力を秘めているように思う。
最近は、多かれ少なかれ丸明オールドに影響を受けたような明朝体フォントも複数あるが、どれも丸明オールドが持つテイストとは程遠く、飽きやすいように感じている。また丸明オールドがリリースされた2001年頃は、明朝体に限らずPC上で使える高品質なフォントが今のように多くは存在していなかったはず…。そんな中で丸明オールドが発表され、感動した人は多かっただろうと思う。最初に発表されてから20年が経過した今は、Adobe Fontsのラインナップに含まれているし、今後も幅広い分野で長く使われていくことだろう。ただ、とても価値があるフォントなだけに、Adobe製のアプリを利用している人ならタダ同然で利用できるAdobe Fontsに追加されたことは、正直もったいない気もするけどね…。
それでは、また来月の「フォントの独り言」でお会いしましょう。ィヨロシク!!
【参考にしたサイト】(いずれも2021.7.16閲覧)●丸明オールド|砧書体制作所https://www.moji-sekkei.jp/mmin.html●砧 丸明オールド StdN R|Adobe Fontshttps://fonts.adobe.com/fonts/marumin-old-stdn
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砧書体制作所(旧カタオカデザインワークス)が2001年にリリースした「丸明オールド」。
一般的な明朝体よりも、文字を組み立てるパーツ(エレメント)に「丸」や「曲線」が多用されている、不思議な印象のフォント。
かつては高価なフォントだったが、今年の春にAdobe Creative Cloudのサブスクリプション契約者が利用できるAdobe Fontsのラインナップに追加され、気軽に利用できるようになった。
今回は、そんな「丸明オールド」の話をしようと思う。
まず丸明オールドとは、こんなフォント↓
かな文字は達筆な人が書いたような、手書きの印象をも持ち合わせている。
そんなかな文字と比べると漢字には一見大きな特徴がないように思えるが、エレメント(文字を組み立てるパーツ)の端が丸ゴシックのように丸く、他にもあらゆるところに「丸」が取り入れられている。
また漢字の横線は程々に太いので、文字のサイズが小さめでも無理なく読むことができる。
他の明朝体よりリズミカルに見えるし、「古さ」とか「懐かしさ」は感じられるのに決して「古臭い」印象は無い感じ。
かな文字のデザインを遊ばせ過ぎているせいで、勢いで何度か使ったらそのフォントの可能性を追求する前に使う側が飽きてしまいそうなデザインの明朝体もある中で、丸明オールドは遊び心がありながらも「下品」だとか「ダサい」印象がまったく見受けられず、なぜか「飽きない」のだ。
この丸明オールドで好きな言葉やメッセージを並べてみるとわかるのだが、他の明朝体で全く同じ文字を並べるよりも、伝わる情報量が多く、言葉がより深く、重く感じられる。
伝えたいメッセージをとりあえず目立たせたい、とりあえず読んでもらいたいという気持ちから「目立たせよう」と考えると、つい文字を大きくしたり太いウェイトのフォントを使ったり、あるいは単に奇抜なデザインのフォントを選んだりしてしまいがちだ。
しかし丸明オールドは細めのウェイトなのに、書き手が伝えたいメッセージを読み手に率直に伝えるだけでなく、読み手にそのメッセージの裏側に隠された深い意味まで考えさせるチカラを持っている。
打ち込むメッセージ関係なく、「丸明オールド」というフォント単体のデザインのイメージを言葉であらわすなら「古い」「温かい」「懐かしい」辺りだと思うが、打ち込むメッセージによって、そのメッセージに合わせて表情を変えてくれるのだ。
だから僕はキャッチコピーなどに丸明オールドが使用された広告などを見ると、必ずと言って良いほど立ち止まってしまう。
それは単にフォントのデザインが好きだからってだけじゃなく、「読みたい」と思わせてくれるチカラを丸明オールドが持っている、そんな感覚からだ。
同じメッセージでも、フォントを適切に使い分けることで人の気持ちが揺れ動かされるのは確かだが、丸明オールドは特に「人の心に直接語りかける」、そんな能力を秘めているように思う。
最近は、多かれ少なかれ丸明オールドに影響を受けたような明朝体フォントも複数あるが、どれも丸明オールドが持つテイストとは程遠く、飽きやすいように感じている。
また丸明オールドがリリースされた2001年頃は、明朝体に限らずPC上で使える高品質なフォントが今のように多くは存在していなかったはず…。
そんな中で丸明オールドが発表され、感動した人は多かっただろうと思う。
最初に発表されてから20年が経過した今は、Adobe Fontsのラインナップに含まれているし、今後も幅広い分野で長く使われていくことだろう。
ただ、とても価値があるフォントなだけに、Adobe製のアプリを利用している人ならタダ同然で利用できるAdobe Fontsに追加されたことは、正直もったいない気もするけどね…。
それでは、また来月の「フォントの独り言」でお会いしましょう。ィヨロシク!!
【参考にしたサイト】(いずれも2021.7.16閲覧)
●丸明オールド|砧書体制作所
https://www.moji-sekkei.jp/mmin.html
●砧 丸明オールド StdN R|Adobe Fonts
https://fonts.adobe.com/fonts/marumin-old-stdn
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