#43 「麗雅宋」から視える"美しい"の形 2021/07/10
ダイナコムウェアからリリースされている「麗雅宋」(れいがそう)というフォント。ダイナフォントのパッケージ販売が始まって間もない頃から現在まで愛されているデザイン書体だ。ダイナコムウェアが毎年発行している『ダイナフォント総合カタログ』によれば、1997年頃にリリースされたそうだ。最初に一番太いウェイト「W9」(Regular)がリリースされ、後により細い「W5」「W7」の2ウェイトが追加されて計3ウェイトのファミリーとなった。今回は、そんな「麗雅宋」に関して取り上げようと思う。
まず麗雅宋とは、こんなフォント↓ひと言でいうと、「美しさ」そのもの。漠然と「美しい」「きれいな」印象のフォントって何がある?と聞かれたら、僕は真っ先に「麗雅宋」を挙げるだろう。ここでいう「美しい」とは、明朝体やゴシック体の曲線がきれいに描かれているとか、そういうピンポイントな意味ではない。主体的に美術館に行き作品を鑑賞して感じる「美しさ」ではないし、「人」の美しさや「もの」の美しさなど、限定的なものでもない。成果物を見たり使ったりする人の見解にまるで耳を傾けず、専門的でムズカシイ言葉を並べ立て、自己満足の世界に入り浸って完結する自称プロのデザイナーが語る「美しさ」とも違う。フォントにまったく詳しくない人や、デザインやアートの分野に長けていない人も含め、多くの人が「美しい」と無意識に感じる「概念」のようなもの…。そのぼんやりとした美しさの概念をデザインに落とし込んで「視える化」したフォント、それが「麗雅宋」かなと僕は感じている。
デザインもそうだが、文字をただ並べただけできれいに組めるように設計されているのも評価できるポイントだ。「美しい」印象のフォントは他にもあるが、文字がきれいに並んで見えるように1文字ずつ手を加えてやらないと扱いにくかったり、やたら気取ったデザインで汎用性に欠け、勢いで使ってみたとしてもすぐに飽きてしまうフォントもある。確かに麗雅宋には無いような「美しさ」はあるけど、欲しいフォントはそういうのじゃないんだよ、求めている「美しさ」じゃないんだよ!と突っ込みたくなるようなフォントもたくさんある。もちろん個々人が考える「美しさ」への考え方はみんなそれぞれ違うから正解がどれとは言えないけど、少なくとも麗雅宋はプロ・アマ問わずだいたいの人が納得できるであろう最も平均的(?)な美しさが表現されていると僕は思う。そんな麗雅宋だって頻繁に目にすると飽きるけど、だからってもう二度と使わなくなるようなフォントでもない。他社から奇抜なデザイン書体がリリースされるとついそちらに目が行き勢いで使ってしまうけど、それに飽きたり実は思っていたほど使いやすくないことに気付いたりすると、「あ、やっぱり麗雅宋だわ」と思って戻ってきてしまう、実家や我が家のような安心感・安定感があるのだ。
さらに使いやすい形でリリースされていることもあってか、漫画のセリフ用のフォントとして写植用の(今のところPCでは使えない)同系統のフォントに代わって採用されている例も多く見られる。漫画のセリフで使われるフォントって、色を変えたり一文字ごとに手を加えたり、装飾を施したりせずとも充分に見映えのする使い良いフォントが採用されやすい傾向があるからね。好みはそれぞれあるにせよ、「麗雅宋」がそこで採用されているのは、完成度において一定以上の評価を得ているからに他ならないと思う。現に麗雅宋がリリースされた後の2001年には「優雅宋」(ゆうがそう)、さらに2008年には「ロマン輝」「ロマン雪」「ロマン鳳」など、広く展開されている。もしかしたら麗雅宋がヒットしたから、同系統のフォントの開発に力を入れているのかもしれないね。
昔からダイナフォントは完成度が低いとかダサいとか叩かれることが多くあったが、少なくともデザイン書体やPOP書体のラインナップは、他社フォントでは代替が効かないんだよ。この頃はゴシック体や明朝体などの基本書体の開発にも注力しているようだからね。まだまだ1つの記事として取り上げたい魅力的なフォントがたくさんあるので、今後も引き続き応援したい。
それでは、また来月の「フォントの独り言」でお会いしましょう。ィヨロシク!!
【参考にしたサイトなど】(いずれも2021.6.13閲覧)●DynaSmartシリーズ「麗雅宋」を含む多くのフォントがサブスクリプション形式で利用可能。https://www.dynacw.co.jp/netshop/netshop_dynasmart.aspx●DFP麗雅宋|ダイナフォントのダウンロード製品任意の文字列で試し打ちができます。https://www.dynacw.co.jp/product/product_download_detail.aspx?sid=3489●『ダイナフォント総合カタログ2020』(PDF版)https://www.dynacw.co.jp/support/support_download_list.aspx?sid=39
スポンサーサイト
ダイナコムウェアからリリースされている「麗雅宋」(れいがそう)というフォント。
ダイナフォントのパッケージ販売が始まって間もない頃から現在まで愛されているデザイン書体だ。
ダイナコムウェアが毎年発行している『ダイナフォント総合カタログ』によれば、1997年頃にリリースされたそうだ。
最初に一番太いウェイト「W9」(Regular)がリリースされ、後により細い「W5」「W7」の2ウェイトが追加されて計3ウェイトのファミリーとなった。
今回は、そんな「麗雅宋」に関して取り上げようと思う。
まず麗雅宋とは、こんなフォント↓
ひと言でいうと、「美しさ」そのもの。
漠然と「美しい」「きれいな」印象のフォントって何がある?と聞かれたら、僕は真っ先に「麗雅宋」を挙げるだろう。
ここでいう「美しい」とは、明朝体やゴシック体の曲線がきれいに描かれているとか、そういうピンポイントな意味ではない。
主体的に美術館に行き作品を鑑賞して感じる「美しさ」ではないし、「人」の美しさや「もの」の美しさなど、限定的なものでもない。
成果物を見たり使ったりする人の見解にまるで耳を傾けず、専門的でムズカシイ言葉を並べ立て、自己満足の世界に入り浸って完結する自称プロのデザイナーが語る「美しさ」とも違う。
フォントにまったく詳しくない人や、デザインやアートの分野に長けていない人も含め、多くの人が「美しい」と無意識に感じる「概念」のようなもの…。
そのぼんやりとした美しさの概念をデザインに落とし込んで「視える化」したフォント、それが「麗雅宋」かなと僕は感じている。
デザインもそうだが、文字をただ並べただけできれいに組めるように設計されているのも評価できるポイントだ。
「美しい」印象のフォントは他にもあるが、文字がきれいに並んで見えるように1文字ずつ手を加えてやらないと扱いにくかったり、やたら気取ったデザインで汎用性に欠け、勢いで使ってみたとしてもすぐに飽きてしまうフォントもある。
確かに麗雅宋には無いような「美しさ」はあるけど、欲しいフォントはそういうのじゃないんだよ、求めている「美しさ」じゃないんだよ!と突っ込みたくなるようなフォントもたくさんある。
もちろん個々人が考える「美しさ」への考え方はみんなそれぞれ違うから正解がどれとは言えないけど、少なくとも麗雅宋はプロ・アマ問わずだいたいの人が納得できるであろう最も平均的(?)な美しさが表現されていると僕は思う。
そんな麗雅宋だって頻繁に目にすると飽きるけど、だからってもう二度と使わなくなるようなフォントでもない。
他社から奇抜なデザイン書体がリリースされるとついそちらに目が行き勢いで使ってしまうけど、それに飽きたり実は思っていたほど使いやすくないことに気付いたりすると、「あ、やっぱり麗雅宋だわ」と思って戻ってきてしまう、実家や我が家のような安心感・安定感があるのだ。
さらに使いやすい形でリリースされていることもあってか、漫画のセリフ用のフォントとして写植用の(今のところPCでは使えない)同系統のフォントに代わって採用されている例も多く見られる。
漫画のセリフで使われるフォントって、色を変えたり一文字ごとに手を加えたり、装飾を施したりせずとも充分に見映えのする使い良いフォントが採用されやすい傾向があるからね。
好みはそれぞれあるにせよ、「麗雅宋」がそこで採用されているのは、完成度において一定以上の評価を得ているからに他ならないと思う。
現に麗雅宋がリリースされた後の2001年には「優雅宋」(ゆうがそう)、さらに2008年には「ロマン輝」「ロマン雪」「ロマン鳳」など、広く展開されている。
もしかしたら麗雅宋がヒットしたから、同系統のフォントの開発に力を入れているのかもしれないね。
昔からダイナフォントは完成度が低いとかダサいとか叩かれることが多くあったが、少なくともデザイン書体やPOP書体のラインナップは、他社フォントでは代替が効かないんだよ。
この頃はゴシック体や明朝体などの基本書体の開発にも注力しているようだからね。
まだまだ1つの記事として取り上げたい魅力的なフォントがたくさんあるので、今後も引き続き応援したい。
それでは、また来月の「フォントの独り言」でお会いしましょう。ィヨロシク!!
【参考にしたサイトなど】(いずれも2021.6.13閲覧)
●DynaSmartシリーズ
「麗雅宋」を含む多くのフォントがサブスクリプション形式で利用可能。
https://www.dynacw.co.jp/netshop/netshop_dynasmart.aspx
●DFP麗雅宋|ダイナフォントのダウンロード製品
任意の文字列で試し打ちができます。
https://www.dynacw.co.jp/product/product_download_detail.aspx?sid=3489
●『ダイナフォント総合カタログ2020』(PDF版)
https://www.dynacw.co.jp/support/support_download_list.aspx?sid=39
スポンサーサイト
コメント