#40 直線100%の「映える」フォント? 2021/04/10(Sat)
NISから販売されているフォントの中で最も代表的といえる「JTCウイン」シリーズ。その中でも、フォントに含まれる約7000文字がすべて直線のみで構成(デザイン)された角ゴシック系のデザインフォント「JTCウインZ」は、NISが販売するフォントの中でもかなり魅力的なフォントのひとつだ。しかし、同じ骨格でちょっと風変わりにデザインされた「JTCウインZM」は、それほど注目されていないように思う。僕はむしろ、この「ZM」の方が変わっていて好きなんだけどね。そこで今回は、直線のみで構成されたデザインフォント「JTCウインZM」についての話をしようと思う。
まず、「Z」と「ZM」を比較してみる↓フォントの名前こそよく知らないって人でも、「こんなカクカクした文字見たことある!」と思った人もいると思う。「Z」の中で一番太い「Z10」は人気が高く、2000年前後は特に使用例が多かったように思うし、当時と比べると減ったが20年以上経った今でも使用例が見られる。「ZM」に関しては、現在のNIS公式サイト内にフォントごとの詳細が書かれたページがなくなったため見られないが、過去にあった「ZM」の紹介ページを見ると、「JTCウインZシリーズの経験を明朝体に活かした極太直線明朝体です。たくましく大胆なイメージです」と書かれていた。「明朝体に活かした」というか、割と素直な直線のエレメント(文字を作り上げるパーツ)で構成された「Z」と比べ、「ZM」は個々のエレメントに明朝体にあるような抑揚を持たせた感じ。例えば始筆部分から終筆部分に向かって徐々に線が細く(または逆に太く)なっていくところや、明朝体特有の「ウロコ」と呼ばれる部分(下記画像参照)を直線だけで再現したりと、直線だけで明朝体にあるようなテイストをいかに再現し、フォントとしてまとめ上げられるか、限界に挑戦した感じかな。だけど完成した「ZM」は、明朝体のテイストを少し取り入れた「角ゴシック系のデザインフォント」だね。明朝体が持つ要素を意識しただけで、明朝体とはまるで違うジャンルのフォントだと思う。
「直線だけ」で美しく文字を組めるように、また大きなインパクトが表現できるように作られた「Z」は、一般的なゴシックや明朝ほどでは無いが少々堅い印象もある。自社が販売するフォントのジャンルに「デザイン書体」や「デザインフォント」を設けていないNISはJTCウインZシリーズを「POP」系に分類しているようだが、「Z」はPOPというと少し違うように思う。確かにPOPな印象もあるにはあるけど、やはりPOPというよりはデザインフォント寄りだと思うんだよね。一方で「ZM」は、「Z」同様に「直線だけ」という制約の中でデザインしつつ、「Z」よりもより軽快な印象を持つフォントに仕上げてある。POP系フォントというと、ゴシックや明朝よりも「曲線」をいかに遊ばせてデザインするか、というイメージがあるが、「ZM」は「直線」だけで構成されているのに、曲線を多用したPOP系フォントと同様の遊び心が感じられ、文字が「活きている」ように見えるのだ。「ZM」も「Z」と同様に曲線を一切使わずにデザインしてあるのに、曲線を使ってきれいにデザインされたフォントと同様に、文字が活き活きして見えるのだ。曲線を多用したPOP系フォントと異なり、あまりダサい印象が感じられないから、場面によっては準定番フォントとして扱うこともできると思う。「Z」もカッコイイしこちらの方が人気があるようだが、「ZM」と比べると堅い印象が拭えない点で、僕は使いにくいようにも感じている。
「Z」や「ZM」以外にも直線が印象的なデザインフォントはあるが、文字のコーナー部分には曲線が使われていたりする。それぞれの文字を引き締まったデザインに仕上げ、フォントとして使いやすい形にまとめ上げるには、曲線を扱えないとまず話にならないだろう。しかし曲線の扱いは、フォントをいくつもデザインしてきたようなクリエイターでもかなり悩ましいところなんだと思う。そもそも人間の目や頭は、曲線をきれいに描けるほど正確にできていないし、同時に目の錯覚というものもある。だから数学的に規則正しい曲線や円を組み合わせてフォントを作っても、最終的にはフォントをデザインする人がその「目」で確認しながら微調整する必要が出てくる。文字を構成する曲線が使い手の目に少しでも貧弱に映れば、そのフォント全体の印象までも貧弱になり、残念なクオリティになってしまうし、そういう残念な完成度のフォントも実際にたくさんある…。直線だけでフォントをデザインすることも同様で、曲線を扱わないのだから一見簡単そうにも思えるかもしれないが、むしろ人間(使い手)の目にストレスを感じさせないきれいな曲線を描けるクリエイターだからこそ、「Z」や「ZM」が完成したんだと思う。特に今回あえて取り上げた「ZM」は、直線しか使っていないのに文字に「生命が宿っている」「活きている」と思わせてくれるデザインで、フォントとしても使いやすい。まさしく「直線だけ」でフォントをデザインすることの限界に挑戦し、使い手にとっても使いやすく仕上げたクリエイターさんの志には感服する。
ただ、「Z」はZ1・Z5・Z10と太さが3つあるが、「ZM」はZM9の1つしかない。ぜひともこの「ZM」も、「Z」と同様にファミリー展開して欲しかったな。人気の「Z」だけでなく、「ZM」にも「Z」と同様に、さらに「Z」には無い魅力が詰まったフォントだと、僕は思っているからね。
それでは、また次回の「フォントの独り言」でお会いしましょう。ィヨロシク!!
【参考にしたサイト】(いずれも2021.3.12閲覧)●JTCウインZM9|ニィスフォント文字の見本(2016.12.13時点でのアーカイブ)https://web.archive.org/web/20161213181757/http://nisfont.co.jp/font/pop/OT-NIS-ZM9.html●【NISFont人気No.1!】JTCウインZシリーズ|NISFontのブログhttps://www.nisfont.co.jp/blog/2015_07_15/●JTCウインZM9|デザインポケット↓今回紹介した「JTCウインZM」で試し打ちができます。https://designpocket.jp/dl_font_category/detail.aspx?bid=13280
スポンサーサイト
NISから販売されているフォントの中で最も代表的といえる「JTCウイン」シリーズ。
その中でも、フォントに含まれる約7000文字がすべて直線のみで構成(デザイン)された角ゴシック系のデザインフォント「JTCウインZ」は、NISが販売するフォントの中でもかなり魅力的なフォントのひとつだ。
しかし、同じ骨格でちょっと風変わりにデザインされた「JTCウインZM」は、それほど注目されていないように思う。
僕はむしろ、この「ZM」の方が変わっていて好きなんだけどね。
そこで今回は、直線のみで構成されたデザインフォント「JTCウインZM」についての話をしようと思う。
まず、「Z」と「ZM」を比較してみる↓
フォントの名前こそよく知らないって人でも、「こんなカクカクした文字見たことある!」と思った人もいると思う。
「Z」の中で一番太い「Z10」は人気が高く、2000年前後は特に使用例が多かったように思うし、当時と比べると減ったが20年以上経った今でも使用例が見られる。
「ZM」に関しては、現在のNIS公式サイト内にフォントごとの詳細が書かれたページがなくなったため見られないが、過去にあった「ZM」の紹介ページを見ると、「JTCウインZシリーズの経験を明朝体に活かした極太直線明朝体です。たくましく大胆なイメージです」と書かれていた。
「明朝体に活かした」というか、割と素直な直線のエレメント(文字を作り上げるパーツ)で構成された「Z」と比べ、「ZM」は個々のエレメントに明朝体にあるような抑揚を持たせた感じ。
例えば始筆部分から終筆部分に向かって徐々に線が細く(または逆に太く)なっていくところや、明朝体特有の「ウロコ」と呼ばれる部分(下記画像参照)を直線だけで再現したりと、直線だけで明朝体にあるようなテイストをいかに再現し、フォントとしてまとめ上げられるか、限界に挑戦した感じかな。
だけど完成した「ZM」は、明朝体のテイストを少し取り入れた「角ゴシック系のデザインフォント」だね。
明朝体が持つ要素を意識しただけで、明朝体とはまるで違うジャンルのフォントだと思う。
「直線だけ」で美しく文字を組めるように、また大きなインパクトが表現できるように作られた「Z」は、一般的なゴシックや明朝ほどでは無いが少々堅い印象もある。
自社が販売するフォントのジャンルに「デザイン書体」や「デザインフォント」を設けていないNISはJTCウインZシリーズを「POP」系に分類しているようだが、「Z」はPOPというと少し違うように思う。
確かにPOPな印象もあるにはあるけど、やはりPOPというよりはデザインフォント寄りだと思うんだよね。
一方で「ZM」は、「Z」同様に「直線だけ」という制約の中でデザインしつつ、「Z」よりもより軽快な印象を持つフォントに仕上げてある。
POP系フォントというと、ゴシックや明朝よりも「曲線」をいかに遊ばせてデザインするか、というイメージがあるが、「ZM」は「直線」だけで構成されているのに、曲線を多用したPOP系フォントと同様の遊び心が感じられ、文字が「活きている」ように見えるのだ。
「ZM」も「Z」と同様に曲線を一切使わずにデザインしてあるのに、曲線を使ってきれいにデザインされたフォントと同様に、文字が活き活きして見えるのだ。
曲線を多用したPOP系フォントと異なり、あまりダサい印象が感じられないから、場面によっては準定番フォントとして扱うこともできると思う。
「Z」もカッコイイしこちらの方が人気があるようだが、「ZM」と比べると堅い印象が拭えない点で、僕は使いにくいようにも感じている。
「Z」や「ZM」以外にも直線が印象的なデザインフォントはあるが、文字のコーナー部分には曲線が使われていたりする。
それぞれの文字を引き締まったデザインに仕上げ、フォントとして使いやすい形にまとめ上げるには、曲線を扱えないとまず話にならないだろう。
しかし曲線の扱いは、フォントをいくつもデザインしてきたようなクリエイターでもかなり悩ましいところなんだと思う。
そもそも人間の目や頭は、曲線をきれいに描けるほど正確にできていないし、同時に目の錯覚というものもある。
だから数学的に規則正しい曲線や円を組み合わせてフォントを作っても、最終的にはフォントをデザインする人がその「目」で確認しながら微調整する必要が出てくる。
文字を構成する曲線が使い手の目に少しでも貧弱に映れば、そのフォント全体の印象までも貧弱になり、残念なクオリティになってしまうし、そういう残念な完成度のフォントも実際にたくさんある…。
直線だけでフォントをデザインすることも同様で、曲線を扱わないのだから一見簡単そうにも思えるかもしれないが、むしろ人間(使い手)の目にストレスを感じさせないきれいな曲線を描けるクリエイターだからこそ、「Z」や「ZM」が完成したんだと思う。
特に今回あえて取り上げた「ZM」は、直線しか使っていないのに文字に「生命が宿っている」「活きている」と思わせてくれるデザインで、フォントとしても使いやすい。
まさしく「直線だけ」でフォントをデザインすることの限界に挑戦し、使い手にとっても使いやすく仕上げたクリエイターさんの志には感服する。
ただ、「Z」はZ1・Z5・Z10と太さが3つあるが、「ZM」はZM9の1つしかない。
ぜひともこの「ZM」も、「Z」と同様にファミリー展開して欲しかったな。
人気の「Z」だけでなく、「ZM」にも「Z」と同様に、さらに「Z」には無い魅力が詰まったフォントだと、僕は思っているからね。
それでは、また次回の「フォントの独り言」でお会いしましょう。ィヨロシク!!
【参考にしたサイト】(いずれも2021.3.12閲覧)
●JTCウインZM9|ニィスフォント文字の見本(2016.12.13時点でのアーカイブ)
https://web.archive.org/web/20161213181757/http://nisfont.co.jp/font/pop/OT-NIS-ZM9.html
●【NISFont人気No.1!】JTCウインZシリーズ|NISFontのブログ
https://www.nisfont.co.jp/blog/2015_07_15/
●JTCウインZM9|デザインポケット
↓今回紹介した「JTCウインZM」で試し打ちができます。
https://designpocket.jp/dl_font_category/detail.aspx?bid=13280
スポンサーサイト
コメント