#38 何なの? 「奈」なの! 2021/02/10(Wed)
2019年夏、フォントワークスが「LETS」会員向けにリリースしたフォント「奈」。リリース前に発表があった際、どういう読み方をするのだろうと思っていたのだが、どうやらこの漢字1文字で「なん」と読むらしい。文字単体で見るとアンバランスだか、文字を並べるごとに調和してくる……のかはわからない、まさにナンとも言い難いフォント(笑)。今回は、そんなフォント「奈」について取り上げようと思う。
まず「奈」とは、こんなフォント↓フォントワークスの「奈」の紹介ページには、『左右、上下のスペースの不均等さは「集中・集約からの拡散・発散・飛翔」、「ハジケ(弾け)る様」をイメージしてデザインしています」とあった。確かに多くのフォントは文字をデザインする正方形の枠の中心を起点にデザインされるが、「奈」の場合は左上を起点にしているっぽいね。そこから右下に向かって「拡散・発散・飛翔」、あるいは「ハジケ」ているようなイメージは感じられる。そこに至る前の「集中・集約」のイメージは、残念ながら僕には全く感じられなかった。単に左上の起点から右下に向かって広がっている、ただそれだけという感じ。細身ではあるものの、太めのフォントとはまた違う存在感があるというのか、ナンとなくだけどもしっかり頭に刻まれるものを持っていると思う。
ライトノベル(ラノベ)や漫画・アニメ、ゲームなどのタイトルで使用すると面白くなるかもしれない。実際、「奈」に限らず近年フォントワークスからリリースされるフォントは漫画やアニメ、ライトノベル、同人誌や関連グッズなどの分野での活躍を明らかに意識しているように思う。そういった「オタク文化」では、好んで使う人もあらわれるかもしれない。
それ以外の分野ではどうだろうか。癖の強さを面白いと思ってくれる人なら使ってくれるかもしれないが、ゴシック体や明朝体のような堅い印象のフォント、あるいはタイポス系(「奈」と同じLETSに含まれるフォントでいうと「スキップ」や「ハミング」など)のように汎用性が高いデザインフォントを好んで使う人たちからは、あまり相手にされないかもしれない。癖が強くても太さがあれば使ってもらいやすいけど、癖があるのに細身…というフォントの特性が難しいところだ。だから用途はおのずと書籍のタイトルや商品・サービスの名前など、大きめに使って目立たせるような場面に限られてくるだろう。タイトルでもシリーズものなどで定番フォントとして使うには少々キツイものがあるように思う。雑誌のように、その瞬間・その時代のトレンドによって内容が激しく移り変わっていくような場面や、仕事の納期の都合でフォントのセレクトにじっくり迷っている暇がなくとりあえず個性の強いフォントを勢いで使って注目してもらおう、という時には使えるかもしれない。
フォントとしての使いやすさというか機能性の視点では、正直評価に値しないと僕は思う。そのまま文字を並べてもきれいには映らないので、「奈」を効果的に使いたい場合は、組み方であったりレイアウトであったり、かなり細かい手間をかけることになるだろう。ただ、すべての文字が統一されたデザインできれいにまとめられている点は高く評価したいな。かなり思いきったデザインだし使いにくさも目立つけど、その思いきったデザインをフォントとして機能するようにまとめあげることは、フォントデザイナーだからこそ為せる職人業だね。
ちなみに2021年1月現在、通常版LETSの契約者は同サービスで使えるフォントの多くをWebフォントとして使えるサービスの利用権も付随する。この頃はやたらと動きのあるWebサイトが増えたが、「奈」はそういう場面で活躍しそう。紙面よりも案外Webなどの電子媒体では活躍するフォントかも…?僕のぼんやりとしたイメージだが、今後ゲームやVRなどの分野がもっともっと発展していくだろうから、そういった分野で活躍する可能性のあるフォントかな、なんて考えている。
まだリリースされて1年半程度なのでナンともいえない「奈」だが、使い手の腕で良い使用例が見られることも期待したい。あえて使うことは多くないかもしれないし、はっきり「使わない」と断言する人もいるかもしれないが、ユニークなフォントを取り揃えているLETSだし、こういうフォントがあってもイイネ、と思わせてくれるフォントではあった。
それでは、また来月の「フォントの独り言」でお会いしましょう。ィヨロシク!!
【参考にしたサイト】(いずれも2021.1.14閲覧)●奈 L|フォントワークス 書体見本↓好きな文字列で「奈」を試せますhttps://fontworks.co.jp/fontsearch/nanstd-l/●製品リリースノート|フォントワークスhttps://fontworks.co.jp/company/releasenote/
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2019年夏、フォントワークスが「LETS」会員向けにリリースしたフォント「奈」。
リリース前に発表があった際、どういう読み方をするのだろうと思っていたのだが、どうやらこの漢字1文字で「なん」と読むらしい。
文字単体で見るとアンバランスだか、文字を並べるごとに調和してくる……のかはわからない、まさにナンとも言い難いフォント(笑)。
今回は、そんなフォント「奈」について取り上げようと思う。
まず「奈」とは、こんなフォント↓
フォントワークスの「奈」の紹介ページには、『左右、上下のスペースの不均等さは「集中・集約からの拡散・発散・飛翔」、「ハジケ(弾け)る様」をイメージしてデザインしています」とあった。
確かに多くのフォントは文字をデザインする正方形の枠の中心を起点にデザインされるが、「奈」の場合は左上を起点にしているっぽいね。
そこから右下に向かって「拡散・発散・飛翔」、あるいは「ハジケ」ているようなイメージは感じられる。
そこに至る前の「集中・集約」のイメージは、残念ながら僕には全く感じられなかった。
単に左上の起点から右下に向かって広がっている、ただそれだけという感じ。
細身ではあるものの、太めのフォントとはまた違う存在感があるというのか、ナンとなくだけどもしっかり頭に刻まれるものを持っていると思う。
ライトノベル(ラノベ)や漫画・アニメ、ゲームなどのタイトルで使用すると面白くなるかもしれない。
実際、「奈」に限らず近年フォントワークスからリリースされるフォントは漫画やアニメ、ライトノベル、同人誌や関連グッズなどの分野での活躍を明らかに意識しているように思う。
そういった「オタク文化」では、好んで使う人もあらわれるかもしれない。
それ以外の分野ではどうだろうか。
癖の強さを面白いと思ってくれる人なら使ってくれるかもしれないが、ゴシック体や明朝体のような堅い印象のフォント、あるいはタイポス系(「奈」と同じLETSに含まれるフォントでいうと「スキップ」や「ハミング」など)のように汎用性が高いデザインフォントを好んで使う人たちからは、あまり相手にされないかもしれない。
癖が強くても太さがあれば使ってもらいやすいけど、癖があるのに細身…というフォントの特性が難しいところだ。
だから用途はおのずと書籍のタイトルや商品・サービスの名前など、大きめに使って目立たせるような場面に限られてくるだろう。
タイトルでもシリーズものなどで定番フォントとして使うには少々キツイものがあるように思う。
雑誌のように、その瞬間・その時代のトレンドによって内容が激しく移り変わっていくような場面や、仕事の納期の都合でフォントのセレクトにじっくり迷っている暇がなくとりあえず個性の強いフォントを勢いで使って注目してもらおう、という時には使えるかもしれない。
フォントとしての使いやすさというか機能性の視点では、正直評価に値しないと僕は思う。
そのまま文字を並べてもきれいには映らないので、「奈」を効果的に使いたい場合は、組み方であったりレイアウトであったり、かなり細かい手間をかけることになるだろう。
ただ、すべての文字が統一されたデザインできれいにまとめられている点は高く評価したいな。
かなり思いきったデザインだし使いにくさも目立つけど、その思いきったデザインをフォントとして機能するようにまとめあげることは、フォントデザイナーだからこそ為せる職人業だね。
ちなみに2021年1月現在、通常版LETSの契約者は同サービスで使えるフォントの多くをWebフォントとして使えるサービスの利用権も付随する。
この頃はやたらと動きのあるWebサイトが増えたが、「奈」はそういう場面で活躍しそう。
紙面よりも案外Webなどの電子媒体では活躍するフォントかも…?
僕のぼんやりとしたイメージだが、今後ゲームやVRなどの分野がもっともっと発展していくだろうから、そういった分野で活躍する可能性のあるフォントかな、なんて考えている。
まだリリースされて1年半程度なのでナンともいえない「奈」だが、使い手の腕で良い使用例が見られることも期待したい。
あえて使うことは多くないかもしれないし、はっきり「使わない」と断言する人もいるかもしれないが、ユニークなフォントを取り揃えているLETSだし、こういうフォントがあってもイイネ、と思わせてくれるフォントではあった。
それでは、また来月の「フォントの独り言」でお会いしましょう。ィヨロシク!!
【参考にしたサイト】(いずれも2021.1.14閲覧)
●奈 L|フォントワークス 書体見本
↓好きな文字列で「奈」を試せます
https://fontworks.co.jp/fontsearch/nanstd-l/
●製品リリースノート|フォントワークス
https://fontworks.co.jp/company/releasenote/
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