#37 まるで兄弟? キアロとスキップ 2021/01/10
フォントワークスがリリースしているフォントの中で、「タイポス系」と呼ばれるフォント。1つは、2002年に同社が年間契約サービス「LETS」を開始した当初から提供されている「キアロ」。もう1つは、キアロを使ったユーザーの声を参考に、より使いやすいように改良された「スキップ」。どちらのフォントも、LETSの契約者であれば使うことができる。今回は、新年のスタートを快く切れそうな軽快なイメージのある「キアロ」と「スキップ」という2つのフォントに関して、僕の思うことを述べたい。
まず「キアロ」及び「スキップ」は、こんなフォント↓「キアロ」はウェイト(太さ)が「B」のみしか存在しないが、「スキップ」は5つのウェイトで構成されている。リリースされたばかりの頃の「スキップ」は、キアロと同様ウェイトは「B」の1種類のみだったようだが、ファミリー展開して欲しいという要望が多かったそうで、2013年にL,M,D,Eの4ウェイトが追加され、計5ウェイトにまで展開された。2019年には、従来のOpenType Std版から収容文字数が拡張されたPro版の「スキップ」もリリースされ、新元号「令和」の合字も収容された。さらに、スキップを丸型にした「ハミング」というフォントの開発も、スキップと同時期に同様の形で進められた(ハミングに関してはここではこれ以上言及しない)。
フォントワークスの「もじがたり」によると、「キアロではカジュアルすぎるし、かといって明朝体では定番過ぎて新鮮味が無いから、その中間となるデザイン性の書体がほしい!」というユーザーからの要望があって「スキップ」を新たに開発したそうだ。従来のキアロはまさしくキャッチーな印象があったからか、フォントワークスコレクションの中では「キャッチ」というカテゴリに属しているのに対し、後から登場したスキップは、キアロとは異なる「ベイシック」というカテゴリに分類されている。
同社にとってキアロはもう完全に過去のフォントで、今後大きな開発とか展開とかをする予定はなさそうだね…。「キアロ」よりも後に登場した「スキップ」の開発がどんどん進められ、キアロが置いてきぼりの状態なのはかわいそうに思える…。
というのも、僕はスキップよりも軽快な印象を持つ「キアロ」が好きなんだよ。確かにスキップの方がウェイトが5つも揃っていて使いやすいし、キアロよりもフォーマルな印象があり安定感も兼ね備えているとは思うけど、キアロと比べると面白みが足りないんだよ。その「面白み」(カジュアルな印象)が一部のユーザーにとっては余計なお世話だったのかもしれないけどね(苦笑)。少々フォーマルな場面でも使いやすくするために、キアロにあった遊び心を抑えたのが「スキップ」なのは判るが、それでもキアロほどの軽快さがなく、窮屈で息苦しい印象がある点で、スキップは面白くないように思う。
これは僕の臆測だが、キアロは画面上で表示することをそもそも想定しておらず、印刷で使うことを前提に開発されたフォントなのかな、と。キアロがいつ頃完成したのかは判らないが、LETSのサービスが始まった2002年に既にあったくらいだから、そこそこ古いフォントだよね。実際、キアロは漢字だけでなくひらがなの横線も細めなので、PCやスマホ、タブレットなどの端末で閲覧するWebサイトに掲載する画像やWebフォント、映像のテロップなどで使用すると、細く設計された横線が鮮明に表示されず、読みづらいうえに見栄えも汚くなってしまう可能性がある(そうなってしまった残念な使用例も見たことがある…)。一方、スキップは横線に充分な太さがあるので、画面上で小さめのサイズで使っても読みやすくなるように作られているのが判る。それに加えて細いものから太いものまで5ウェイトに展開されたから、より多彩な表現ができるのもスキップの強みだ。キアロと比べて使い勝手が良いと判断されたからか、近年では映像のテロップで「キアロ」を見る機会は減り、それに代わるような形で「スキップ」の使用例が増えたように思う。
しかし、それでも僕はスキップよりもキアロの方が、まさしくスキップをしている時のようなリズミカルな印象が感じられる点では好きだし、評価したい。もっとわがままを言えばキアロもスキップと同様のファミリー化にまで踏み切って欲しいくらいなのだが、先に述べたようにキアロのこれ以上の開発はもう行われないような気がしている。仮にそうだとしても、せめて画面上できれいに表示されるよう横線を太めに設計した、テロップ明朝ならぬ「テロップキアロ」、あるいは「UDキアロ」のようなフォントの開発は、ぜひともフォントワークスさんに検討していただきたいというのが、僕の勝手な願いだ。
それではみなさん、2021年も「フォントの独り言」をィヨロシク!!
【今回紹介したフォントで試し打ちができるページ】●キアロ B|フォントワークス 書体見本https://fontworks.co.jp/fontsearch/chiarostd-b/●スキップ B|フォントワークス 書体見本↓他のウェイト(L,M,D,E)に切り替えての試し打ちも可能。https://fontworks.co.jp/fontsearch/skipstd-b/
【参考にしたサイト】(いずれも2020.12.10閲覧)●フォントブログ「スキップ・ハミング最強説」|フォントワークス もじがたりhttps://fontworks.co.jp/column/8164/●2019年4月から12月の「LETS」新書体についてご紹介|フォントワークス もじがたりhttps://fontworks.co.jp/column/3557/●フォントワークス、2013年度新書体を発表|エキサイトニュースhttps://www.excite.co.jp/news/article/Mdn_32341/
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フォントワークスがリリースしているフォントの中で、「タイポス系」と呼ばれるフォント。
1つは、2002年に同社が年間契約サービス「LETS」を開始した当初から提供されている「キアロ」。
もう1つは、キアロを使ったユーザーの声を参考に、より使いやすいように改良された「スキップ」。
どちらのフォントも、LETSの契約者であれば使うことができる。
今回は、新年のスタートを快く切れそうな軽快なイメージのある「キアロ」と「スキップ」という2つのフォントに関して、僕の思うことを述べたい。
まず「キアロ」及び「スキップ」は、こんなフォント↓
「キアロ」はウェイト(太さ)が「B」のみしか存在しないが、「スキップ」は5つのウェイトで構成されている。
リリースされたばかりの頃の「スキップ」は、キアロと同様ウェイトは「B」の1種類のみだったようだが、ファミリー展開して欲しいという要望が多かったそうで、2013年にL,M,D,Eの4ウェイトが追加され、計5ウェイトにまで展開された。
2019年には、従来のOpenType Std版から収容文字数が拡張されたPro版の「スキップ」もリリースされ、新元号「令和」の合字も収容された。
さらに、スキップを丸型にした「ハミング」というフォントの開発も、スキップと同時期に同様の形で進められた(ハミングに関してはここではこれ以上言及しない)。
フォントワークスの「もじがたり」によると、「キアロではカジュアルすぎるし、かといって明朝体では定番過ぎて新鮮味が無いから、その中間となるデザイン性の書体がほしい!」というユーザーからの要望があって「スキップ」を新たに開発したそうだ。
従来のキアロはまさしくキャッチーな印象があったからか、フォントワークスコレクションの中では「キャッチ」というカテゴリに属しているのに対し、後から登場したスキップは、キアロとは異なる「ベイシック」というカテゴリに分類されている。
同社にとってキアロはもう完全に過去のフォントで、今後大きな開発とか展開とかをする予定はなさそうだね…。
「キアロ」よりも後に登場した「スキップ」の開発がどんどん進められ、キアロが置いてきぼりの状態なのはかわいそうに思える…。
というのも、僕はスキップよりも軽快な印象を持つ「キアロ」が好きなんだよ。
確かにスキップの方がウェイトが5つも揃っていて使いやすいし、キアロよりもフォーマルな印象があり安定感も兼ね備えているとは思うけど、キアロと比べると面白みが足りないんだよ。
その「面白み」(カジュアルな印象)が一部のユーザーにとっては余計なお世話だったのかもしれないけどね(苦笑)。
少々フォーマルな場面でも使いやすくするために、キアロにあった遊び心を抑えたのが「スキップ」なのは判るが、それでもキアロほどの軽快さがなく、窮屈で息苦しい印象がある点で、スキップは面白くないように思う。
これは僕の臆測だが、キアロは画面上で表示することをそもそも想定しておらず、印刷で使うことを前提に開発されたフォントなのかな、と。
キアロがいつ頃完成したのかは判らないが、LETSのサービスが始まった2002年に既にあったくらいだから、そこそこ古いフォントだよね。
実際、キアロは漢字だけでなくひらがなの横線も細めなので、PCやスマホ、タブレットなどの端末で閲覧するWebサイトに掲載する画像やWebフォント、映像のテロップなどで使用すると、細く設計された横線が鮮明に表示されず、読みづらいうえに見栄えも汚くなってしまう可能性がある(そうなってしまった残念な使用例も見たことがある…)。
一方、スキップは横線に充分な太さがあるので、画面上で小さめのサイズで使っても読みやすくなるように作られているのが判る。
それに加えて細いものから太いものまで5ウェイトに展開されたから、より多彩な表現ができるのもスキップの強みだ。
キアロと比べて使い勝手が良いと判断されたからか、近年では映像のテロップで「キアロ」を見る機会は減り、それに代わるような形で「スキップ」の使用例が増えたように思う。
しかし、それでも僕はスキップよりもキアロの方が、まさしくスキップをしている時のようなリズミカルな印象が感じられる点では好きだし、評価したい。
もっとわがままを言えばキアロもスキップと同様のファミリー化にまで踏み切って欲しいくらいなのだが、先に述べたようにキアロのこれ以上の開発はもう行われないような気がしている。
仮にそうだとしても、せめて画面上できれいに表示されるよう横線を太めに設計した、テロップ明朝ならぬ「テロップキアロ」、あるいは「UDキアロ」のようなフォントの開発は、ぜひともフォントワークスさんに検討していただきたいというのが、僕の勝手な願いだ。
それではみなさん、2021年も「フォントの独り言」をィヨロシク!!
【今回紹介したフォントで試し打ちができるページ】
●キアロ B|フォントワークス 書体見本
https://fontworks.co.jp/fontsearch/chiarostd-b/
●スキップ B|フォントワークス 書体見本
↓他のウェイト(L,M,D,E)に切り替えての試し打ちも可能。
https://fontworks.co.jp/fontsearch/skipstd-b/
【参考にしたサイト】(いずれも2020.12.10閲覧)
●フォントブログ「スキップ・ハミング最強説」|フォントワークス もじがたり
https://fontworks.co.jp/column/8164/
●2019年4月から12月の「LETS」新書体についてご紹介|フォントワークス もじがたり
https://fontworks.co.jp/column/3557/
●フォントワークス、2013年度新書体を発表|エキサイトニュース
https://www.excite.co.jp/news/article/Mdn_32341/
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