#33 ビジネス文書作成の救世主? 平成明朝体 2020/09/10
ビジネス文書作成には欠かせない明朝体フォント。最近はディスプレイで読みやすいフォントの需要が高くなってきたこと、また印刷物であっても、ユニバーサルデザインの観点で漢字の横線が細い明朝体があまりよろしくないと判断されるケースも増えてきているようだ。しかし、少なくとも印刷目的に限定したビジネス文書においては、2020年の今でも重要な役割を果たしていると僕は思っている。今回は、令和の今も変わらず存在価値が高いと僕が評価している「平成明朝体」についてお話ししたい。
まず平成明朝体とは、こんなフォント↓
明朝体って、縦組を想定して作られているせいか、かな文字が縦に長く横組にすると字間が空いてスカスカになり、適さないものも多くある。それでも高度な組版ができるアプリやテクニックを持っている人なら、横組でも字間や行間を丁寧に調整してきれいに仕上げてくれるけど、一般的なビジネス文書作成をその都度プロに依頼するわけにもいかないからね。最近は場面に関係なくやたらと気取ったデザインの明朝体フォントを使いたがる人がいるが、横組に適しているかどうかに関係なく、フォーマルな場面には適さないと思う。代表的なワープロソフトであるWordで作成される文書では、標準の設定を変えずMS 明朝を使う人が多いが、これはかな文字が少々小ぶりで、しかも全体的に文字が細いので読みにくい。Word 2016で「游明朝」が既定のフォントになってからは、このフォントを見かける機会も増えてきたように感じるが、このフォントはかな文字が少々遊び過ぎたデザインで、オシャレには見えるけどもフォーマルなシーンには向いていないように思うんだよ。
その点「平成明朝体」は、ワードプロセッサが主流だった時代から存在しているだけあり、横組・ベタ組でも無理なく読むことができる。文字組に関して制約の多い環境で、誰がどう使っても一定以上の見栄えが保障される明朝体フォントといえる。まさしく僕がいつも多くのフォントに求めている「使いやすさ」をよく追求してくれたフォントだと思う。ビジネスにおいて、必ず確認してもらわないといけないような事実を、その事実の善し悪しを区別せず、淡々と伝えることには特化した明朝体フォントだと思う。
ただ、他社の明朝体と比較すると、堅い印象なのは間違いなく良さではあるのだが、気になる点でもある。先述したように、フォーマルな場面に向いているという点では良いのだが、使いやすさの観点から離れてデザイン(美しさ)の面だけで評価すれば「美しくない」「ダサい」という言葉に尽きる…かな。横組を意識してデザインしてくれているのは良いんだけど、日本古来のかな文字の骨格の美しさは失われているし、無理のあるデザインにも思える。
あと、これはフォントのデザインと関係のないことだが、どうしてMS Officeでは平成明朝体を採用しなかったのだろう?古いMac環境や、「一太郎」などで知られるジャストシステムのソフトウェアには、標準でバンドルされているというのに…。Word、Excelなど、ビジネスでは主流なMS Officeに平成明朝体と平成角ゴシック体が1ウェイトずつでもバンドルされていれば、もっと気軽に使えたんじゃないだろうか。
冒頭で述べたように、形式張った場面では、明朝体はまだまだ必要不可欠なものだと思う。仕事で組版をしているプロの方なら、まず平成明朝体のような「美しくない」フォントをチョイスすることはほとんどないだろう。ただ、誰もが文字をきれいに組んでみせたり、デザインしたりすることができるわけじゃないし、それらは専門分野であり、上手くできない人の方が世の中の大半だ。そういったデザインが専門でない人たちでも使いやすく、何も考えずに文字を並べても一定の見栄えが維持できるように作られた「平成明朝体」を、機能性の面で僕は高く評価したい。
それでは、また来月の「フォントの独り言」でお会いしましょう。ィヨロシク!!
【今回紹介したフォントで試し打ちができるサイト】・平成明朝 Std|Adobe Fontshttps://fonts.adobe.com/fonts/heisei-mincho-std
【参考にしたサイト】(いずれも2020.8.13閲覧)・平成書体|Wikipediahttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B3%E6%88%90%E6%9B%B8%E4%BD%93・モリサワ 旧リョービ書体を株式会社タイプバンクへ移譲https://www.morisawa.co.jp/about/news/926
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ビジネス文書作成には欠かせない明朝体フォント。
最近はディスプレイで読みやすいフォントの需要が高くなってきたこと、また印刷物であっても、ユニバーサルデザインの観点で漢字の横線が細い明朝体があまりよろしくないと判断されるケースも増えてきているようだ。
しかし、少なくとも印刷目的に限定したビジネス文書においては、2020年の今でも重要な役割を果たしていると僕は思っている。
今回は、令和の今も変わらず存在価値が高いと僕が評価している「平成明朝体」についてお話ししたい。
まず平成明朝体とは、こんなフォント↓
明朝体って、縦組を想定して作られているせいか、かな文字が縦に長く横組にすると字間が空いてスカスカになり、適さないものも多くある。
それでも高度な組版ができるアプリやテクニックを持っている人なら、横組でも字間や行間を丁寧に調整してきれいに仕上げてくれるけど、一般的なビジネス文書作成をその都度プロに依頼するわけにもいかないからね。
最近は場面に関係なくやたらと気取ったデザインの明朝体フォントを使いたがる人がいるが、横組に適しているかどうかに関係なく、フォーマルな場面には適さないと思う。
代表的なワープロソフトであるWordで作成される文書では、標準の設定を変えずMS 明朝を使う人が多いが、これはかな文字が少々小ぶりで、しかも全体的に文字が細いので読みにくい。
Word 2016で「游明朝」が既定のフォントになってからは、このフォントを見かける機会も増えてきたように感じるが、このフォントはかな文字が少々遊び過ぎたデザインで、オシャレには見えるけどもフォーマルなシーンには向いていないように思うんだよ。
その点「平成明朝体」は、ワードプロセッサが主流だった時代から存在しているだけあり、横組・ベタ組でも無理なく読むことができる。
文字組に関して制約の多い環境で、誰がどう使っても一定以上の見栄えが保障される明朝体フォントといえる。
まさしく僕がいつも多くのフォントに求めている「使いやすさ」をよく追求してくれたフォントだと思う。
ビジネスにおいて、必ず確認してもらわないといけないような事実を、その事実の善し悪しを区別せず、淡々と伝えることには特化した明朝体フォントだと思う。
ただ、他社の明朝体と比較すると、堅い印象なのは間違いなく良さではあるのだが、気になる点でもある。
先述したように、フォーマルな場面に向いているという点では良いのだが、使いやすさの観点から離れてデザイン(美しさ)の面だけで評価すれば「美しくない」「ダサい」という言葉に尽きる…かな。
横組を意識してデザインしてくれているのは良いんだけど、日本古来のかな文字の骨格の美しさは失われているし、無理のあるデザインにも思える。
あと、これはフォントのデザインと関係のないことだが、どうしてMS Officeでは平成明朝体を採用しなかったのだろう?
古いMac環境や、「一太郎」などで知られるジャストシステムのソフトウェアには、標準でバンドルされているというのに…。
Word、Excelなど、ビジネスでは主流なMS Officeに平成明朝体と平成角ゴシック体が1ウェイトずつでもバンドルされていれば、もっと気軽に使えたんじゃないだろうか。
冒頭で述べたように、形式張った場面では、明朝体はまだまだ必要不可欠なものだと思う。
仕事で組版をしているプロの方なら、まず平成明朝体のような「美しくない」フォントをチョイスすることはほとんどないだろう。
ただ、誰もが文字をきれいに組んでみせたり、デザインしたりすることができるわけじゃないし、それらは専門分野であり、上手くできない人の方が世の中の大半だ。
そういったデザインが専門でない人たちでも使いやすく、何も考えずに文字を並べても一定の見栄えが維持できるように作られた「平成明朝体」を、機能性の面で僕は高く評価したい。
それでは、また来月の「フォントの独り言」でお会いしましょう。ィヨロシク!!
【今回紹介したフォントで試し打ちができるサイト】
・平成明朝 Std|Adobe Fonts
https://fonts.adobe.com/fonts/heisei-mincho-std
【参考にしたサイト】(いずれも2020.8.13閲覧)
・平成書体|Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B3%E6%88%90%E6%9B%B8%E4%BD%93
・モリサワ 旧リョービ書体を株式会社タイプバンクへ移譲
https://www.morisawa.co.jp/about/news/926
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